沖縄差別が蔓延する日本

何の根拠もない沖縄批判

 1月2日にTOKYOMXで放送された「ニュース女子」という番組で、沖縄県の米軍基地反対運動は「日当をもらっている」などという中傷が行われました。また、この番組に出演した軍事ジャーナリストの井上和彦氏は、「韓国人はいるわ、中国人はいるわ。何でこんな奴らが反対運動やってるんだと地元の人は怒り心頭」と述べ、基地反対運動を批判しました(1月7日付東京新聞)。

 「沖縄はお金が欲しくて基地反対運動をやっている」という主張は、この番組に限らず、日本ではよく見られるものです。例えば、沖縄寄りの姿勢を見せているように見える漫画家の小林よしのり氏も、2015年5月30日に放送された「朝まで生テレビ!」で、「『反対』って言ってるんだけど、実は『生活のためにカネをもっとくれ。それが一番大事なんだ』ということが裏に隠されている話かもしれない」と述べています(2015年5月30日付livedoorNEWS)。

 これは率直に言って沖縄差別そのものです。沖縄の人たちがお金のために基地反対運動をやっているなどというのは、何の根拠もない見方です。自分たちがお金で動くような人間だから、他人も同じようにお金で動いているに違いないと考えるのでしょう。

 ここでは、弊誌2015年9月号に掲載した、作家の佐藤優氏と哲学者の山崎行太郎氏の対談を紹介したいと思います。なお、ウェブサービスnoteにご登録いただくと、この対談の全文を100円で読むことができます。noteの登録は無料です。是非お試しください。(YN)
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「沖縄を理解できない」ということを理解せよ

山崎 無知蒙昧型の反知性主義は、沖縄問題をめぐる議論に顕著に表れていると思います。本土では小林よしのりのような人が、沖縄が基地反対運動をしているのはお金がほしいからだとか、こういう議論をしていますよね。

佐藤 自分がそういう人間だから、そのように見えるというだけの話ですね。

山崎 そうですね。しかし、保守文化人たちがいくらこのような批判をしたところで、現在の沖縄情勢には何一つ影響を与えることができません。彼らはそのことがわかっていない。

 僕は沖縄について議論するためには、今の米軍基地問題を見ているだけでは本質が見えないと思うんです。米軍基地問題だけでなく、沖縄の歴史を辿り、琉球処分やその前の琉球王国の歴史を知る必要があると思います。

佐藤 それから特に1609年の琉日戦争ですね。

山崎 そうした歴史を見れば、沖縄が独立する可能性があることは誰にだってわかるはずです。例えば、柄谷さんは沖縄をスコットランドと比較し、「なぜスコットランドが独立を望むのか、私にもよく事情が理解できない。しかし、むしろそれ以上に理解しがたいのは、琉球が日本から独立しないでいることである」と言っています。

 ところが、小林よしのりや櫻井よしこなどは、スコットランドと沖縄をリンクさせて見ることができない。また、彼らは中国のチベット問題を厳しく批判していますが、沖縄が日本のチベットになり得るということに全く気づいていない。

佐藤 あの人たちにはそれはできないですね。チベット問題は非常に深刻ですが、あの人たちは政治主義的に利用しているだけです。

 しかし、これはある意味で仕方がないことなのかもしれない。人口の圧倒的大多数を占める均質な99%の日本人たちが、1%の沖縄人たちが持つ澱や襞を理解できないのはある意味で当然のことです。

 となると、「沖縄を理解できない」ということを理解するという想像力を持てるかどうかですね。「理解不能だが、たぶん自分たちとは違うことを考えているんだろう」と思うことができるかどうか。それから、一寸の虫にも五分の魂で、人間は追い込まれた時にどういうことをするかということに対する想像力を持つことができるかどうか。