藻谷浩介 人口から見る世界の未来

中国の台頭をどう見るべきか

 昨今、中国の台頭には著しいものがあります。2018年も中国は国際社会に対して大きな影響力を行使していくはずです。もっとも、中国の台頭は未来永劫続くものではありません。我々は中国を過大評価も過小評価もせず、冷静に付き合っていく必要があります。

 ここでは弊誌2018年1月号に掲載した、日本総合研究所調査部主席研究員の藻谷浩介氏のインタビューを紹介したいと思います。全文は1月号をご覧ください。

圧倒的最大規模かつ急速な高齢者増加

―― 藻谷さんは人口という観点から経済を分析されています。最近のメディアでは「中国台頭論」がしきりに唱えられていますが、人口推計に基づくと、別の側面が見えてくると思います。

藻谷 人口予測には色々な不確定要素がありますが、高齢者がどれくらい増加するかについては外れることはありません。例えば、2017年時点で35歳以上の人が、2050年に65歳以上になることは確定しています。隕石が落ちて大量絶滅が起きるような事態にならない限り、ほぼ確実です。

 こうした人口予測を行う上で参考になるのが、国連人口部がホームページで公開している人口推計・予測です。彼らは出生や死亡などの傾向に基づき、全世界各国の2100年までの人口推計・予測を行っています。国連人口部の推計は何種類かあり、出生率の見通しを厳しく見積もるかどうかなどにより、上位推計、中位推計、下位推計にわかれています。また、移民あり推計、移民なし推計という分類もあります。ここでは常識的な判断から、中位推計・移民あり推計を用います。

 それでは、中国の人口推計・予測を見てみましょう。中国の習近平国家主席は、建国100年にあたる2049年までに、中国を世界の冠たる強国にするという趣旨のことを言っています。そこで、2015年時点と2050年時点における、65歳以上の人口と生産年齢人口(15〜64歳)を比較してみます。生産年齢人口は社会の実態に合っていないと言われることがありますが、中国ではつい最近まで定年が60歳だったので、中国社会の実態には合致しています。

 国連人口部の中位推計・移民あり推計によると、中国は2015年時点で、65歳以上の人々は1億3千万人、生産年齢人口は10億1千万人となっています。これに対して、2050年時点では、65歳以上の人々は3億7千万人、生産年齢人口は7億8千万人となります。

 これは世界史上、圧倒的に最大規模の、かつあまりに急速な高齢者増加です。もちろん現在の日本よりも厳しい状況です。福祉や医療の専門家にこの数字を見せると、みな絶句します。

 しかも、実際にはこれよりも厳しい数字になる可能性もあるのです。というのも、国連人口推計は、高齢者の数を少なめに、子供の数を多めに見積もる傾向があるからです。日本の場合を見ても、国連の推計は日本政府の推計と比べ、子供の数はずいぶん多く、高齢者は少なくなっています。彼らは日本や中国の長寿力を舐めているのでしょう。そのため、中国の2050年の数字がこれより厳しくなったとしてもおかしくないですし、これより甘くなることはないと断言できます。……