赤子が泣くのは 俺の心が泣くのだ

南丘喜八郎著(2014年12月刊行)

平成九年四月に雑誌『月刊日本』を創刊してから、早いもので十八年近くの歳月が経ちました。
この間、敗戦後、米国に身も心も支配されている我が国の現状に憤り、政治家の不甲斐なさに怒り、毎号、已むに已まれぬ憂国の思いを拙文に託して、読者諸兄姉に訴えてきました。
一介の雑誌屋、しかも浅学非才の身にもかかわらず、現状への思いの丈を書き連ねてきました。思えば、汗顔の至りです。過日、友人から「巻頭言」を一冊の本にまとめてはどうかと勧められ、躊躇しつつも、この度、出版に踏み切りました。

タイトルの『赤子が泣くのは、俺の心が泣くのだ」は、私が尊敬する中野正剛が昭和十七年、大隈講堂で演説した「天下一人を以て興る」の中で、大塩平八郎に言及した箇所で述べた言葉です。当事者意識を以て事に当たれ、との意であると心得ています。
「見物者でいてはならぬ、当事者となれ」と。
最近になって、吉田松陰の詠んだ歌をしばしば思います。

大丈夫の死ぬべき時に死にもせで 猶蒼天に何と対へん

本書は『月刊日本』の巻頭言をまとめただけの拙文ではありますが、私の思いの一端でもお汲み取り下されば幸いです。
読者諸兄姉、『月刊日本』編集部の同志に心から感謝の誠を捧げます。

平成二十六年十一月三日 明治節の日に
(全文 本書まえがきより)