アメリカで台頭する軍産複合体
アメリカで軍産複合体の力が強くなっています。先日アメリカのトランプ大統領が来日した際にも、日本に兵器を売り込んできました。彼らは北朝鮮危機を兵器売り込みのために利用しています。あるいは、兵器を売り込むために北朝鮮危機を大きく見せているとも言えるでしょう。
ここでは、弊誌11月号に掲載した元公安調査庁第二部長の菅沼光弘氏のインタビューを紹介したいと思います。全文は11月号をご覧ください。
北朝鮮危機は軍需産業の利益のために演出されている
── 日本に対する兵器購入圧力も強まっています。
菅沼 現在の日本は、レーガン時代つまり米ソ冷戦時代のように、国土の防衛をアメリカに任せ、専ら経済成長に力点を集中するというわけにはいきません。アメリカは自国の軍拡を進めるとともに、同盟国に対しても、防衛力を強化し、アメリカからの兵器購入拡大を迫っています。
7月上旬にドイツのハンブルクで行われた日米首脳会談でも、トランプ大統領は戦闘機などの防衛装備品をもっと購入するよう安倍総理に強く求めました。これに呼応するように、2018年度予算の概算要求で、防衛省は過去最大となる5兆2000億円の防衛予算の計上を決めました。すでに、日本政府はイージス艦搭載のミサイルシステムを地上に配備する「イージス・アショア」の配備を決め、配備候補地選びを進めています。
イージス・アショアは、1基800億円程度とされていますが、アメリカとの協議の上、金額を確定させるとしており、さらに費用がかさむことになるでしょう。しかも、その運用には約100人の要員が必要だと言われています。また、高価なTHAADミサイルの導入も検討されています。さらに「敵基地攻撃能力」の保有を検討している日本政府は、巡航ミサイル「トマホーク」導入に踏み切る可能性もあります。
まさに北朝鮮の核・ミサイルの脅威は、アメリカが軍拡を推進し、日本や韓国などの同盟諸国へのアメリカからの兵器購入を拡大する格好の口実となっているのです。
9月19日のトランプ大統領の国連演説もこうした視点で見る必要があります。トランプ大統領は、「アメリカと同盟国を守ることを迫られれば、北朝鮮を完全に破壊する以外の選択肢はない」と述べ、金正恩委員長をロケットマンとこき下ろし、「北朝鮮はならず者国家だ」と強い言葉で批判しました。極めて激しい言葉で北朝鮮を批判し、挑発したわけです。
これに対して9月21日、金正恩委員長は異例の「国務委員長」名義で声明を出し、「トランプが最も暴悪な宣戦布告をしたからには、我々もそれにふさわしい、史上最高の超強硬対応措置の断行を慎重に検討する」「米国の老いぼれ狂人を必ず、必ず、火で制するだろう」と述べたのです。「史上最高の超強硬対応措置」について、北朝鮮の国連大使は太平洋上での水爆実験だとも語っています。
これによって、マスメディアは再び「米朝開戦か」と報じ始めています。そして、これに最も過敏に反応しているのがわが国です。安倍総理は、9月20日の国連演説で、北朝鮮について、「必要なのは対話ではない。圧力だ」と語り、臨時国会冒頭の解散を表明した同月25日の会見でも、北朝鮮に対して「あらゆる手段による圧力を、最大限まで高めていくほかに道はない」と述べました。
こうして、「北朝鮮の危機に対処するために、ミサイル防衛システムの強化、さらには敵基地攻撃のための装備が必要」だという論理が展開されているのです。しかし、北朝鮮の危機が本当に迫っていると確信するのなら、なぜこの時期に解散して、政治の空白をもたらす必要があるのでしょうか。安倍総理は、年末には北朝鮮がアメリカ本土まで到達するICBMを完成させる可能性があり、来年がさらに危険になるという理屈のようですが、北朝鮮危機は演出されたものだと見るべきです。……