自民党内で高まる不満
安倍首相は秋の臨時国会に憲法改正案を提出する意向を示しています。しかし、公明党の山口代表は憲法改正の優先順位は低いとして、慎重な対応を求めています。また、自民党内でも安倍首相の独断専行的なやり方に対して不満が高まっています。
ここでは弊誌10月号に掲載した、自民党憲法改正推進本部長代行の船田元衆議院議員のインタビューを紹介します。全文は10月号をご覧ください。
安倍総理は自ら憲法改正の足を引っ張っている
―― 安倍総理は8月12日に、秋の臨時国会で自民党の憲法改正案を提出する意向を明らかにしました。これは事前に党に対して打診があったのですか。
船田 一切ありませんでした。国会議員が憲法改正案を提出する条件は衆議院で100名以上、参議院で50名以上です。安倍総理の発言は、それだけの自民党議員が名前を連ねて、正式に原案を提出しろということです。
しかし問題は、安倍総理が憲法改正に前向きな発言をする度に、現場がストップするということです。これは今まで何度も繰り返されてきたことですが、8月12日の発言はトドメです。もし安倍総理の言うとおりに、自民党が臨時国会で原案を提出したら国会の議論は完全に止まります。これは火を見るより明らかです。
安倍総理が憲法について発言すればするほど、憲法改正が遠のいてしまうのです。総理は現場をご存じないのか。非常に残念です。
たしかに現在、自民党、公明党、日本維新の会などは衆参両院で3分の2の議席を占めています。公明党が最後までついてきてくれるのであれば、野党がいくら反対しようとも、憲法改正の発議は強行採決することができます。しかし強行発議をしたら、おそらく国民投票は否決されます。
はっきり申し上げて、安倍総理は憲法改正の手続き、在り方についてご理解いただけていない部分があると思います。憲法改正は法律と同じように、自民党が主導すれば何でもできるというものではない。他の法律では強行採決ができますが、憲法改正では強行発議ができても国民投票で否決されます。このことは総理ご自身に認識していただかなければなりません。
―― 仮に発議後、国民投票で否決されたらどうするのですか。
船田 安倍総理があそこまで言って強引に主導した改正案が否決されたら、当然ながら政治責任が問われます。続けることはできない。その時は政権の終わりです。