針谷大輔 子供たちの命と麗しき山河を守れ

 反原発は左翼の専売特許ではない。右翼にも原発からの脱却を主張する動きが見られる。

 昨年の7月31日から抗議活動を始めた「右から考える脱原発ネットワーク」(通称「右デモ」)は、現在でも月1回のペースで抗議を続けており、首相官邸前抗議にも一参加者として加わっている。

 なぜ右デモは抗議活動を始めたのか。あえて「右から」と掲げる目的は何か。右デモの主催者である針谷大輔氏に話をうかがった。

なぜ「右から」と名乗るのか

―― なぜ「右から考える脱原発ネットワーク」を立ち上げたのか。

針谷 私はもともと震災前から原発には反対だった。しかし、それを強く意識するようになったのは、震災から二週間ほど後、支援活動のために被災地に入ってからだ。

 被災地では、東電の社員たちが防護服を着て車で移動する姿をよく見かけた。その一方で、一般の市民たちはマスクすらつけずに外を歩いていた。政府や東電が情報を隠していたため、彼らは現地がどれほど危険な状態にあるか知らなかったのだ。その不条理が気に食わなかった。

 その後、4月に高円寺で脱原発デモがあったという話を聞き、こうした動きが大きくなってくれればいいなと思っていたところ、6月に新宿で脱原発デモを行うから何かアピールをしてくれないか、と依頼を受けた。

 ところが、「ヘイトスピーチに反対する会」などの人権団体が、私が登壇することについて主催者側に強い抗議を行った。右翼団体の人間が参加するとは何事か、奴らは差別主義者ではないか、などといったことが理由らしい。

 主催者から連絡を受けて、私は参加を辞退することにした。しかし、左翼から抗議されたので右翼が参加できなくなったということになれば、この脱原発デモは本当の大衆運動にはならない。これでは従来の左翼運動と何も変わらない。いずれ警察に潰されてしまうに違いない。そうした危機感を抱いた。

 実際、その当日には、日の丸を掲げていた参加者が、左翼団体から日の丸を引きずり降ろされるということが起こった。また、今や脱原発で有名となった藤波心さんが、童謡「ふるさと」を歌ったところ、周りからヤジが飛んだ。

 ごく一般に生活している人達にとって、日の丸はオリンピック観戦の時に振る旗であり、「ふるさと」は小学校で習う童謡である。そこに特別なイデオロギーなど感じていない。日の丸を忌避すること自体が一般人の感覚からズレていることに、左翼は全く気付いていない。

 一般の人々は、労働組合の名前が入っている旗が踊っている一方で、日の丸が引きずり降ろされるようなデモに参加したいとは思わない。脱原発デモも所詮は左翼団体の運動に過ぎないのではないかと思われるようになれば、日本全体で盛り上がっている脱原発の良い流れが止まってしまう。

 それを防ぐために、我々は「右から考える脱原発ネットワーク」を立ち上げることにした。右翼も脱原発運動を行っているとわかれば、「脱原発=左翼」というレッテルを剥がすことができる。それが狙いだった。

 「右から」と名付けた以上、我々の運動が大衆運動になることはない。一般の人々は左翼も嫌いだが右翼も嫌いだからだ。しかし、「右から」と名乗っているからこそ出来ることもある。

 我々の目指すところは、現在行われている脱原発運動を、右も左も関係ない本当の大衆運動にすることだ。現状では左翼団体の力が強いので、右デモを継続していく必要がある。

 しかし、右も左も関係ない本当の大衆運動となれば、もはや右デモの存在価値はない。その時は右デモを解散し、一参加者としてデモに参加したい。そうした日が早く来ることを望んでいる。……

以下全文は本誌9月号をご覧ください。