山崎行太郎 沖縄独立論を知らずして、国防を語るなかれ

アメリカは辺野古移設を望んでいない

―― 11月16日に行われた沖縄知事選は、辺野古移設に反対する翁長雄志氏の圧勝という結果となりました。現在の沖縄の状況をどのように見ていますか。

山崎 翁長新知事の誕生で情勢は一変しました。もはや辺野古移設は不可能です。アメリカもそのことに気づいています。例えば、12月7日付の朝日新聞で、ジョセフ・ナイが辺野古移設について「宜野湾市での航空事故などの危険を減らすことになる」と述べ、短期的な解決策としては有効だと指摘しつつも、「長期的には解決策にはならない。固定化された基地の脆弱性という問題の解決にならないからだ」と主張しています。

 アメリカは曲がりなりにも民主主義の国です。それ故、民主主義の原則を無視し、大多数の沖縄県民が反対する政策を暴力的に進めることはできません。また、軍事政策という観点からしても、周辺住民の敵意に囲まれた軍事基地は十分な機能を果たすことができません。アメリカは今回の選挙結果を受けて、ある意味で非常に合理的な判断のもと、移設計画を変更しつつあるのです。

 ところが、安倍政権は相変わらず辺野古移設を強行しようとしています。彼らはアメリカの政策転換を読み取ることができていません。安倍総理は政権の座を手にして以来、集団的自衛権の解釈改憲や特定秘密保護法の制定など、アメリカの希望する政策を次々と行ってきました。辺野古移設もその一つです。安倍総理は中国に対抗するために日米関係を強化しようと考えているのでしょうが、アメリカの政策転換に反して辺野古移設を強行すれば、アメリカの日本に対する不信感が強くなる可能性もあります。

―― 一部の人たちは、金さえばら撒けば沖縄は再び辺野古移設を容認するだろうと主張しています。

山崎 その認識は間違っています。「沖縄は金がほしいだけだ」、「沖縄の基地反対運動は左翼の反日運動だ」、「中国が裏で煽動しているのだ」などと批判すれば、ますます沖縄が日本から離れてしまうだけです。

 沖縄の情勢が今日のような事態にまで至ってしまった最大の原因は、安倍総理を含め保守派が沖縄のアイデンティティを理解できていないことにあります。歴史を振り返れば明らかなように、沖縄は最初から日本の一部だったわけではありません。沖縄は琉球王国として450年もの間、独立国家を維持してきました。しかし、明治5年から始まった琉球処分によって、彼らは大日本帝国の版図に組み込まれました。また、それ以前にも、薩摩藩による武力侵攻を経験しています。

 それ故、沖縄でナショナリズムが台頭するとすれば、それが反日ナショナリズムになるのは当然のことです。翁長知事誕生を主導したのは「沖縄ナショナリズム」であって、左翼勢力の政治工作の結果ではありません。我々は、沖縄が基地問題をめぐり日本政府を強く批判しているのは、沖縄にとってはむしろ自然な姿なのだということを理解しなければなりません。

沖縄の誇りを踏みにじる保守論壇

―― しかし、一般的に沖縄で保守派と呼ばれている人たちは辺野古移設に賛成しています。

山崎 私に言わせれば、辺野古移設に賛成している人たちは保守派でも何でもなく、アメリカにペコペコ頭を下げている親米保守派と同様、単なる「エセ保守」ないし「植民地文化人」に過ぎません。彼らは保守論壇に登場し、「沖縄にも健全な保守派がいる」などと紹介されますが、彼らの意見が沖縄で多数派を占めることはありません。「沖縄にとって保守とは何か」を議論するならば、米軍基地に反対している人々こそ保守と呼ぶべきです。

 このことは、安倍総理を含め保守派が本当に「戦後レジームからの脱却」を実現したいと考えているのであれば、理解できるはずです。日本の保守派は、日本がこれまで一度も西洋列強の植民地にならず、独立を維持してきたことに誇りを感じています。だからこそアメリカが作った戦後レジームに従わなければならないことに屈辱を感じ、そこから脱却したいと考えるわけです。

 沖縄から米軍基地を追い出したいと考えている人たちの思いも同じです。基地問題は沖縄にとって誇りの問題なのです。安倍総理が戦後レジームによって日本の誇りを傷つけられたと考えているならば、沖縄の人たちが抱く怒りにも思いを致すべきです。沖縄の気持ちを理解できない人間に、対米自立を唱える資格はありません。……

以下全文は本誌1月号をご覧ください。