ロナルド・モース 対米従属を強いるアーミテージ・レポート

日本を「下請け国家」扱いする米超党派レポート

―― リチャード・アーミテージ元国務副長官、ジョセフ・ナイ元国防次官補ら米超党派による対日レポートが八月十五日に発表されたが、これもまた日本の対米追従を前提とした提言だ。

モース レポートをとりまとめたアーミテージやナイらの考え方は、日本を意のままに管理、指導しようとした対日占領軍の延長線上にある。彼らの発想は、日本をアメリカに依存させ続け、日本から資金的な協力を引き出そうとするものだ。日本を独立したパワーとして認めず、軍事力以外のソフト・パワーだけを都合よく利用しようとしているに過ぎない。日本をアメリカの「下請け国家」扱いしているのだ。

 一九九三年八月に細川護煕政権が誕生した際、アメリカは日本が日米の二国間体制から抜け出て、国連を中心とした多元的な安全保障体制を構築するのではないかと警戒した。そこで、日本をアメリカに従属させ続けようという意図で、一九九五年二月に「東アジア戦略報告」を取りまとめたのも、ナイだった。彼の構想は日米同盟再定義につながっていき、彼は二〇〇〇年にはアーミテージらとともに超党派で対日外交に関する「第一次アーミテージ・レポート」を、さらに二〇〇七年に「第二次アーミテージ・レポート」を出した。今回のレポートは第三次レポートとなる。

 この一連のレポートは、日本の自立を阻止し、日本をコントロールし続けようという現在のアメリカの体制の意志を反映している。アーミテージ、ナイだけではなく、キャンベル国務次官補、マイケル・グリーン戦略国際問題研究所上級顧問らも同様の考え方をしている

 レポートが超党派の有識者によってまとめられたことは、十一月にオバマが再選されようが、共和党のロムニー政権が誕生しようが、基本的な対日政策は変わらないことを意味している。

―― アメリカは占領軍当時の発想のまま日本を利用しようとしている。

モース アメリカは、第二次世界大戦終結後、対日占領政策において、日本の国家の枠組みを根本的に変革しようとした。武装解除し、農地改革、財閥解体、教育改革などを進めて民主的な国家にしようとした。憲法第九条によって軍事力を保有できないようにし、日米安保条約によって安全保障はアメリカに依存するようにした。

私は強い日本を断固支持する!

―― かつて存在した「憲法九条を改正し国防軍を保有すべき」という主張は、いつしか忘れ去られ、日本の政治家たちは日米安保への依存を当然と考えるようになってしまった。こうした中で、二〇〇九年に政権の座に就いた鳩山由紀夫首相は、普天間基地を国外、最低でも県外に移設しようとした。

モース アメリカ政府は、沖縄の米軍基地問題を非常に気にかけている。この問題をきっかけに、日本国民が対米依存の問題について改めて考えるようになることを懸念している。

―― 結局、鳩山政権は基地問題で迷走して退陣、「日米関係を悪化させた」との批判を浴び、その後の菅政権、そして野田政権はアメリカ追従を強めている。

モース 確かに、アメリカの指導層は日本をアメリカの下請け国家として継続させる政策をとってきたが、アメリカ国内には「自立した日本」を支持する考え方もある。不平等、片務的な状態のまま日米安保を強化しようとしているところに問題があるのだ。それは従属を強めることにしかならない。

 軍事的に独立している国家が、自らの選択としてアメリカとの関係を強化することはいいことだ。アメリカには、日本を弱体化したままの状態にしておこうというウイーク・ジャパン派と、日本が軍事力を強化して世界に貢献することを期待するストロング・ジャパン派とが存在する。私は、後者の立場に立っている。

 十分な軍事力を持たず、アメリカの核の傘の下で、経済力だけの片肺飛行を続けてきた結果、日本は多くの犠牲を払うことになった。自らの頭で国家戦略や危機管理について考えなくなり、国家の存続にとって不可欠な情報収集力も失われてしまった。

 戦前の日本とは違い、現在の日本は決して軍国主義になるような状況にはない。再び戦前の失敗を繰り返すようなことはない。いまこそ、日本は憲法九条を改正して軍事力を保有し、真の独立国家となるべきだ。

以下全文は本誌10月号をご覧ください。