安倍政権の支持基盤は脆弱だ
自民党総裁選では石破茂候補が善戦し、地方票で45%を獲得しました。これにより、安倍政権の支持基盤が脆弱であることが露見しました。安倍首相は三選を果たしましたが、何かきっかけがあれば政権はすぐにレームダックに陥り、瓦解するでしょう。
安倍首相がこの政権基盤の脆弱さを補うために利用してきたのが、警察権力です。ここでは弊誌10月号に掲載した、作家の佐藤優氏のインタビューを紹介します。全文は10月号をご覧ください。
警察権力に依存する安倍政権
―― 安倍政権は特定秘密保護法やいわゆる共謀罪など、警察の権力を強大化させる法律を次々に施行してきました。また、新聞の首相動静を見ると、安倍首相は内閣情報調査室(内調)のトップである北村滋内閣情報官と毎日のように面会しており、警察を非常に信頼しているように見えます。
佐藤 安倍政権が警察との関係を重視するのは、政権基盤が盤石でないからです。安倍政権は一見すると強固な体制を築いているように見えますが、実際はそうではありません。もしいま森友学園をめぐる文書改ざん問題が発覚してホットな話題になっていれば、安倍首相の自民党総裁3選はあり得なかったはずです。ここからもわかるように、安倍政権は何かきっかけがあればすぐに崩壊してしまうような脆弱な体制なのです。
安倍政権も自らの弱さを自覚していると思います。それだから、警察幹部たちにどんどんポストを与えるなど、警察に対して様々な配慮を行っているのです。カジノ法案が成立して日本にカジノが作れるようになれば、警察の末端まで利権を得ることになるので、さらに警察との関係は強化されるでしょう。
もっとも、警察の力が強いのは、何もいまに始まったことではありません。警察は以前から隠然たる力を持っていました。
日本の警察は一般警察としての役割に加え、他国への情報漏えいを防ぐカウンター・インテリジェンス(防諜)としての役割も担っています。この仕事に従事しているのが警備公安警察です。日本の警察は一般警察とカウンター・インテリジェンス機関が合体してできた組織なのです。
これはアメリカのFBI(連邦捜査局)と同じ構造です。アメリカではFBIが連邦レベルの警察としての役割を果たすと同時に、カウンター・インテリジェンスにも従事しています。一般的には、権力が強大化することを避けるため、警察とカウンター・インテリジェンス機関を切り離すのですが、日本やアメリカではこれらが融合しているのです。
この融合は今後、さらに進んでいくと思います。それは現在がテロの時代だからです。テロに対しては基本的に警察力で対応することになります。そのため、カウンター・インテリジェンスの手法によってテロ組織の情報を入手することがきわめて重要になります。また、テロリストを制圧するために、警察は軍隊の機能も兼ね備えていくことになると思います。
これは日本に限った話ではありません。たとえばロシアでも、警察に加え、税務警察や非常事態省、内務省、陸海空軍、戦略ロケット軍、宇宙軍など、軍隊型の組織を持った「力の省庁」と呼ばれる省庁の力が強くなっています。軍隊型の組織が強くなっているのは、世界的な傾向なのです。……