安倍政権の6年を総括する

安倍政権とは何であったのか

 第二次安倍内閣は異例の長期政権となりました。自民党総裁選が終わったいま、我々は「安倍政権とは何であったのか」ということを一度総括しておく必要があります。

 あえて大胆な類比を行えば、安倍政権はヒトラー政権に通ずるところが多々見られます。かつて麻生財務大臣が憲法改正について「ナチスの手口に学んだらどうか」と発言したことがありますが、これは決して冗談として受け流すことはできません。

 たとえば、安倍政権は集団的自衛権の容認や共謀罪など、憲法に抵触する法案を次々と施行してきました。これはナチスのやり口に似ています。実際、ドイツの国法学者でヒトラー政権を支えたオットー・ケルロイターは、ヒトラーは授権法やニュルンベルク法などを通すことで、ワイマール憲法を改正せずに葬り去ることができたと述べていました(『ナチス・ドイツ憲法論』)。

 また、ヒトラーは政権運営を行う上で、既成省庁の所管領域を横断する大きな権限を持つ全権委員を多数設置しました(石田勇治『ヒトラーとナチス・ドイツ』)。これは安倍政権が経済財政諮問会議や国家戦略特区諮問会議などを重視する姿勢と類似していると言えます。

 少数民族の抑圧も共通する点です。ナチスはユダヤ人を徹底的に弾圧しましたが、当時のドイツではユダヤ人は少数派だったため、多くの人たちは関心を払いませんでした。安倍政権も沖縄人を徹底的に抑圧していますが、多くの日本人は沖縄の現状に無関心です。

安倍政権とナチスの決定的違い

 もちろん違いもあります。その一つが経済政策です。ヒトラーは財政出動や公営企業の雇用拡大をはじめ、なりふり構わない経済政策によって雇用状況を改善しました。

 これに対して、安倍政権は新自由主義政策を続けており、格差や貧困が拡大しています。有効求人倍率が上がっているのは団塊世代が現役を引退したからで、アベノミクスのおかげではありません。

 もう一つはイデオローグの不在です。ヒトラー政権はハイデガーやカール・シュミットなど、今日までその名を轟かせる知識人たちによって支えられていました。彼らの存在がなければ、ナチス政権が長期化することもなかったでしょう。

 他方、現在の安倍政権を支持している学者やジャーナリストなどの中で、知的に優れた人は一人もいません。それは『新潮45』最新号を見れば明らかです。彼らは提灯持ちにはなれてもイデオローグにはなりえません。

 日本はこの6年の間に壊滅的打撃を被りました。この状況を立て直すには、問題を一つひとつ地道に解決していく以外に方法はありません。一発逆転ホームランは存在しません。

 本誌10月号ではこうしたことを念頭に特集を組みました。ご一読いただければ幸いです。