『月刊日本』2021年11月号の紹介

傀儡政権の耐えがたい空虚

 11月号は本日22日より書店販売を開始いたします。

 今月号では新たに誕生した岸田文雄政権について分析しました。岸田政権の誕生は安倍晋三氏と麻生太郎氏の支援なしには考えられませんでした。そのため、岸田政権は再び安倍傀儡政権になると見られています。

 実際、岸田氏は自民党総裁選の最中から安倍氏への忖度を働かせていました。当初は森友問題に関してさらなる説明が必要との認識を示していましたが、安倍氏の反発を避けるため、のちに再調査の必要性を否定するようになりました。

 また、2019年に自民党本部が参院選広島選挙区に提供した1億5千万円に関して、岸田氏は当時の党本部に対して納得のいく説明を求めていましたが、自らが総裁になると、再調査に慎重な姿勢を示すようになりました。この問題を突きつめていけば、当時総裁だった安倍氏の責任問題に発展するからでしょう。

 岸田内閣の個別の人事を見ていけば、安倍氏の影響力を小さくするために努力した形跡が読み取れないわけではありません。安倍氏は幹事長に高市早苗氏、官房長官に萩生田光一氏を推していましたが、岸田氏はそれらの要求をはねのけました。また、幹事長に甘利明氏、副総裁に麻生氏を据えるなど、旧宏池会勢力を重用することで、安倍氏の出身派閥である清和会に対抗しようとする様子も見られます。

 おそらく岸田氏は来年の参院選に勝利したあと、本格的に安倍排除に動き出すつもりなのだと思います。それまで待ってくれというのが岸田氏の本音でしょう。しかし、それは所詮、岸田氏の自己都合にすぎません。いますぐ安倍氏を排除できないなら、岸田政権も結局は安倍傀儡政権にすぎないと言わざるを得ません。

 こうした問題意識から、立憲民主党の福山哲郎氏、国民民主党の玉木雄一郎氏、参議院議員の上田清司氏、政治学者の中島岳志氏にインタビューいたしました。

 また、このたび政界を引退する衆議院議長の大島理森氏に、議会のあり方について聞きました。

政治と一体化する警察

 政治と警察の一体化が進んでいます。第二次安倍晋三内閣から菅義偉内閣にかけて、政権に気に入られた警察関係者たちが次々に官邸中枢に登用され、かつてないほど強大な権力を握るようになりました。

 その代表格が、両内閣を通じて官房副長官の職に就き、内閣人事局長まで兼務した杉田和博氏です。杉田氏が注目されるようになったのは、加計学園問題がきっかけでした。元文科事務次官の前川喜平氏が加計学園問題について告発する直前、読売新聞が、前川氏が出会い系とされるバーに通っていたと報じました。前川氏は在職中、杉田氏に呼びつけられ、この店に出入りしていることを注意されたといいます。

 なぜ杉田氏は前川氏の行動を把握していたのか。警察を使って前川氏を監視していたからとしか考えられません。

 警察官僚を重用した安倍首相と菅首相は退任しましたが、それによって政治と警察の一体が止まることはありません。先般、警察庁長官に中村格氏、警視総監に大石吉彦氏が就任しました。中村氏は菅官房長官の秘書官を5年以上務め、大石氏は安倍首相の秘書官を6年以上務めた人物です。安倍・菅政権が終わっても、彼らに近い警察官僚たちは引き続き要職に居座り続けています。

 もとより、警察は社会にとって必要な存在であり、警察をなくすわけにはいきません。警察を政治から遠ざけ、健全な形で維持していく方法を考えなければなりません。

 そこで、警察問題に詳しいジャーナリストの青木理氏、警察官僚出身の元衆議院議員、亀井静香氏に、警察のあり方について聞きました。

原敬暗殺100年 いま原敬から何を学ぶか

 いまから100年前の大正10年11月4日、時の総理大臣・原敬が東京駅頭で暗殺されました。原の死はその後の日本が転落の歴史をたどる転機となりました。

 原敬は日本初の本格的な政党内閣を作り上げた「平民宰相」として知られています。〝賊軍〟南部藩出身の原は薩長による藩閥政治と闘い、現代に続く政党政治の礎を築き上げました。一方、普通選挙法に反対して民主主義に歯止めをかけたり、利権政治の端緒を開いたと批判されることもあります。

 原が毀誉褒貶にさらされるのは、己の信ずる理想を実現するために現実と血みどろの格闘をしてきたからだと思います。

 翻って現在、原敬のように理想実現のため現実と格闘する真の政治家はいるでしょうか。政党政治が機能不全に陥り、政治家のレベルが低下しているいまこそ、我々は原敬がいかに現実と闘ったのかを学ばなければなりません。

 原敬に関する著作を持つジャーナリストの佐高信氏、評論家の平野貞夫氏、原敬を敬愛してやまない自民党の齋藤健氏に話を聞きました。

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