『月刊日本』2021年4月号の紹介

揺らぐ菅政権 その急所と行方

 弊誌4月号は22日より書店販売を開始いたします。

 いま菅内閣は多くの問題に直面し、政権基盤が揺らいでいます。総務官僚接待問題、森喜朗元総理の女性蔑視発言、公明党との関係、さらにアメリカでバイデン政権が誕生したことで、日米関係にも変化が見られます。衆議院議員の任期が迫る中、永田町は「いつ解散が行われるのか」と浮足立っています。
 
 作家の佐藤優氏は、日本の保守層の中で反米意識が強まる可能性を指摘しています。日本の保守派は中国のウイグル問題を人権侵害という観点から厳しく批判していますが、人権は普遍的な概念で、選択的に使用できるものではありません。ウイグル問題が人権侵害なら、徴用工問題や慰安婦問題も人権侵害です。そのため、国際社会の中でウイグル問題に注目が集まれば、同じように徴用工問題や慰安婦問題への関心も高まり、アメリカが日本批判を始めることも考えられます。それに日本の保守層が反発し、日米関係が揺らぐ可能性があります。

 元東京地検特捜部の郷原信郎氏は、4月に行われる参議院広島選挙区の再選挙に注目しています。自民党陣営には、河井案里氏の選挙で選挙違反を犯した人たちが関わっています。この選挙は案里氏の有罪が確定したことに伴って行われる「やり直しの選挙」だったはずなのに、これではとても公正な選挙とは言えないと、郷原氏は批判しています。

 いまの自民党に必要なのは石橋湛山の精神ではないか。元自民党幹事長の石破茂氏はこう指摘しています。石橋湛山は戦前はジャーナリストとして軍国主義を厳しく批判し、戦後には吉田茂内閣の大蔵大臣としてアメリカに対して言うべきことを言っていました。首相としての在任期間はわずか65日しかありませんでしたが、いまこそ自民党はその姿勢に学ぶ必要があるというのが、石破氏の見解です。

「保守」と権力の関係を問い直す!

 また、今月号では大村秀章愛知県知事のリコール不正署名問題を受けて、「保守」と権力の関係に関する特集を組みました。

 リコール不正署名問題は、民主主義の根幹を揺るがす重大な事件です。アメリカには先の大統領選挙を「不正選挙」と見なす人たちがいますが、日本では実際に不正が行われていたのです。

 この問題はいわゆる保守派の姿勢を問うものでもあります。今回のリコール運動には保守論客や保守勢力が多数関わっており、大村知事と対立する河村たかし名古屋市長とも連携していました。もちろん彼らが不正の事実を知っていたとは思いませんが、やはりその責任は大きいと言わざるを得ません。

 戦前の日本でも、保守派や右派に分類される人たちは権力と結びつき、権力を強力に支えていました。彼らは国内の戦意をあおりにあおり、日本を戦争へと導いていきました。

 新聞業界や出版業界もこの動きを後押ししました。新聞が保守論客たちの主張を紹介し、出版社が彼らの書籍を刊行しなければ、彼らの影響力が大きくなることはなかったでしょう。

 私たちはこれを機に、リコール不正の全容解明に加え、権力と新聞の関係や権力と出版の関係を問い直さねばなりません。

 「保守」のあり方については東工大教授の中島岳志氏に、権力と出版の関係についてはジャーナリストの魚住昭氏に話をうかがいました。また、リコール不正署名問題に関してはジャーナリストの成田俊一氏にルポを書いていただきました。

東日本大震災10年 原発事故・被曝・甲状腺がん

 東日本大震災から早くも10年がたちました。死者1万5900人、行方不明者2525人、震災関連死3775人――震災の犠牲者は2万2200人に上ります。加えて、未だに故郷へ帰ることができない避難者は全国で4万1781人にも上っています。

 なぜ震災関連死が多いのか。なぜ避難者は故郷に帰ることができないのか。福島第一原発事故が終らないからです。原発事故は未だに収束の兆しが見えず、廃炉作業は遅々として進んでいません。被曝の危険性も解消されていません。

 今月号では、福島県の親子が国や県を訴えた「子ども脱被曝裁判」を取材しました。また、脱原発に取り組んできた弁護士の河合弘之氏に、原発推進派と自然エネルギーの現状についてうかがいました。

 その他にも読み応えのある記事が満載です。ご一読いただければ幸いです。