『月刊日本』2020年9月号の紹介

「大日本帝国化」する中国

 弊誌9月号は明日21日より書店販売を開始いたします。
 
 9月号では「中国とどう向き合うか」という特集を組みました。中国は香港の民主化運動を弾圧し、台湾に対して武力行使をちらつかせ、日本の尖閣諸島周辺海域で領海侵犯を繰り返しています。これらは決して許されることではありません。私たちは断固として中国政府の振る舞いを批判しなければなりません。

 しかし同時に、私たちは一度立ち止まり、自分自身に問いかけてみる必要があります。果たして私たちに中国を批判する資格があるのか、と。

 日本には香港と同様、民主主義が抑圧されてきた場所があります。それは沖縄です。日本はこれまで何度も沖縄の民意を無視し、沖縄に米軍基地を押しつけてきました。沖縄では米軍基地に反対するデモや集会が行われ、選挙でも幾度となく基地反対派が勝利してきました。それにもかかわらず、その声が尊重されることはありませんでした。

 日本が沖縄に対して行ってきたことは、中国が香港に対して行っていることと、構造的には同じです。沖縄の民意を尊重しようとしない日本が、中国の香港政策を批判したところで、どれほどの説得力があるでしょうか。

 あるいは、戦前の日本のことを振り返ってみると、戦前の大日本帝国は台湾や朝鮮半島を植民地統治し、中国を侵略しました。かつて日本がやったことと、現在の中国がやっていることの間に、どれほどの違いがあるでしょうか。

 現在の中国を批判するなら、日本は過去の歴史と向かい、真摯に反省しなければなりません。その意味で、中国のあり方を問うことは、現在の日本ならびに過去の日本を問うということでもあります。

 この視点に基づき、東京工業大学教授の中島岳志氏、元世界問題研究所所長の東郷和彦氏、元防衛大臣の岩屋毅氏、元早稲田大学総長の西原春夫氏に話をうかがいました。

問われる国家指導者の責任

 また、今月号では、なぜ日本は新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めることができないのか、その背景を探りました。一つは、言うまでもなく政治の責任です。東京都医師会の尾﨑治夫会長は、直ちに国会を召集するように求めたことで話題になりましたが、弊誌のインタビューに対しても、政府は病院や医療従事者の善意に甘えるだけで適切な医療体制の整備を行っていないと述べています。

 政治の責任という点では、官邸内の権力闘争も無視できません。毎日新聞の伊藤智永氏は、安倍官邸はこれまで、今井尚哉総理秘書官兼補佐官を中心とする「官邸官僚」と、菅官房長官をトップとする「内閣官房」によって支えられてきたが、このバランスが崩れつつあると指摘しています。今井氏の主導するコロナ対策が失敗に終わったため、菅官房長官に権力が集中し始めているのです。

 こうした権力闘争は、当事者にとっては重大なことかもしれませんが、国民からすれば実に迷惑な話です。

 ノンフィクション作家の山岡淳一郎氏には、新著『ドキュメント感染症利権』(ちくま新書)に基づき、PCR検査が一向に増えない原因をうかがいました。それは厚労省と文科省の縄張り争いによるところが大きいというのが、山岡氏の指摘です。

 さらに今月号では「問われる国家指導者の責任」という特集を組み、「ポスト安倍」の最有力候補である石破茂氏、政界きっての政策通として知られる林芳正氏、野党合流をめぐって注目の集まる玉木雄一郎氏に話をうかがっています。

 その他にも読み応えのある記事が満載です。ご一読いただければ幸いです。