『月刊日本』2020年11月号の紹介

日本学術会議 言論統制は亡国への道

 本誌11月号は明日22日より書店販売を開始いたします。

 11月号では日本学術会議問題を取り上げました。菅政権は高支持率での船出となりましたが、これは単なる「ご祝儀相場」であり、実際には派閥の均衡の上に成り立つ脆弱な体制です。そのため、何かをきっかけに政権は一気に不安定化します。学術会議問題はそのきっかけになりうるものだと思います。

 著述家の菅野完氏はこの問題を受けて、直ちに官邸前でハンガーストライキを始めました。菅野氏は、この問題の本質は総理大臣が法の運用を蔑ろにしているところにあると指摘しています。そのため、この問題は学問の自由だけでなく、思想信条の自由や言論の自由など、あらゆる自由と関係してきます。自分が学者ではないからとか、学術会議のメンバーではないからといって、放っておいていいということにはならないのです。

 立憲民主党幹事長の福山哲郎氏は、「国家権力は国民の自由に介入する」という脅迫だと指摘しています。そして、政権側の人間は何をしても許されるが、政権を批判した人間はそれだけで排除されるような社会は認められないと、厳しく批判しています。

菅総理を揺るがす「負の遺産」

 菅政権は日本学術会議問題以外にも多くの問題を抱えています。安倍政権から引き継いだ森友問題や「桜を見る会」疑惑、元法相の河井克行・案里夫妻が逮捕された事件など、数え上げればキリがありません。これらはすべて、安倍政権で官房長官を務めた菅総理にも責任がある問題です。

 菅政権ではメディアと政権の関係も厳しく問われることになります。菅総理は官房長官時代、記者会見で「そのような指摘は当たらない」、「全く問題ない」といった答弁を繰り返し、国民に対する説明責任を果たしてきませんでした。総理大臣としてこうした答弁を続けることは絶対に許されません。

 また、菅総理のブレーンとしてパソナ会長の竹中平蔵氏がついていることも見落とせません。竹中氏は安倍総理のブレーンとして、新自由主義政策を推し進めてきました。菅政権でも竹中氏の影響力が強まれば、日本社会の格差はさらに拡大し、多くの国民が苦しい生活を強いられることになるでしょう。

 森友問題については、『私は真実が知りたい 夫が遺書で告発「森友」改ざんはなぜ?』(文藝春秋)の著者である相澤冬樹氏、「桜を見る会」疑惑については、この問題を一貫して追及してきた毎日新聞統合デジタル取材センターの吉井理記氏、河井事件に関しては元東京地検特捜部の郷原信郎氏、メディア問題については東京新聞の望月衣塑子氏、そして竹中平蔵氏に関しては『竹中平蔵 市場と権力 「改革」に憑かれた経済学者の肖像』(講談社文庫)の著者である佐々木実氏に話をうかがいました。

国家観なき政治家に危機が突破できるか

 また、今月号では、新型コロナウイルスという危機を突破するために政治指導者に何が求められるかについて議論しました。

 自民党幹事長の二階俊博氏は、何か問題が起こると「田中角栄先生ならどう考えるか」と立ち止まって考えることが習わしになっていると言います。田中角栄の突破力は、まさに危機の時代にこそ求められるものです。私たちはいま一度田中角栄を見直す必要があると思います。

 元自民党幹事長の石破茂氏は徳川宗家19代目の徳川家広氏との対談で、徳川治世を見直す必要があると述べています。徳川幕府は265年もの間、平和を保ち、朝鮮半島とも良好な関係を維持していました。また、中央集権と地方分権をうまく両立させていました。こうした知恵を現代に活かすべきだというのが石破氏の議論です。

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