『月刊日本』2021年7月号の紹介

言論の府・国会は死んだ

 弊誌7月号は本日22日より書店販売を開始いたします。
 
 今月号では国会閉会にあわせて今日の政治状況について議論しました。
 
 今国会で2年ぶりに行われた党首討論は、国会の衰退を強く実感させるものでした。菅義偉首相は立憲民主党の枝野幸男代表からコロナ対策や東京オリンピック・パラリンピックについて問われるも、正面から答えず、持論を滔々と述べるだけでした。

 それでは、今回の党首討論は野党の勝利だったのでしょうか。決してそうではありません。

 枝野氏からは「政権を絶対に奪取する」という気迫も情熱も感じられませんでした。枝野氏はあえて行儀よく立ち回ることで、「立憲民主党は批判ばかりしている」と非難されることを回避したかったのかもしれませんが、率直に言って菅首相にいなされているようにしか見えませんでした。あの答弁下手の菅首相を追いつめられないで、いったい誰を追いつめられるのでしょうか。

 与野党ともに力を落とす中で、日本政治はどこに向かうのか。こうした観点から、自民党元幹事長の山崎拓氏石破茂氏、元行革担当相の村上誠一郎氏にお話をうかがいました。山崎氏が「解散総選挙は9月で決まり」と断じていることには大きな意味があると思います。山崎氏は近未来政治研究会の最高顧問を務めており、この派閥には菅政権に対して大きな影響力を持つ森山裕国対委員長が所属しているからです。

「コロナ五輪」強行! 翼賛メディアの大罪

 いま日本政府は問題だらけの東京五輪を強行しようとしていますが、これに対して大手メディアはしっかりとした批判ができていません。

 この最大の要因は、大手メディアが五輪スポンサーになっていることです。朝日新聞は五輪中止を求める社説を掲載しましたが、その一方でスポンサーはやめないとしています。これでは単なるアリバイ作りと見られても仕方ないでしょう。

 実際、メディアの現場では言論統制と言ってもよい状況が広がっています。作家の本間龍氏は、ニュース番組のディレクターから取材の依頼をうけ、五輪を批判する内容のインタビューを収録した後、放送の直前で「なかったことにしてください」とドタキャンされることが何回もあったと明かしています。

 もっとも、スポンサーになっているからといって五輪を批判できないわけではありません。大手紙の中でいち早く五輪批判を行ったのは、毎日新聞の牧太郎氏です。牧氏は毎日新聞を含め様々な媒体で五輪批判を行ってきましたが、それに対して社内から圧力がかかったことはないと述べています。とすれば、メディアが五輪批判をできないのは、広告の問題だけでなく、記者の資質の問題も関わっていると言えるでしょう。

 東京新聞は五輪批判を積極的に行っているメディアの一つです。しかし、社説で明確に五輪中止を訴えているわけではありません。これに関して、東京新聞の望月衣塑子氏は、社説で中止の立場を明確にしていないのは残念だと述べています。

買収目的交付罪の嫌疑は十分

 また、今月号では元東京地検特捜部の郷原信郎氏に、河井克行氏の裁判とそれが安倍晋三前総理に与える影響について論じていただきました。2019年の参議院選挙の際、広島選挙区から出馬した河井案里氏の陣営に、自民党本部から1億5000万円もの資金が提供されました。この資金支出は安倍氏が決定したものと見られています。この点について、郷原氏は買収目的交付罪が成立する可能性があると指摘しています。

 日本総合研究所会長の寺島実郎氏にはコロナ500日を総括してもらいました。国際社会の中では「日本の埋没」という認識がコンセンサスになりつつあると、寺島氏は指摘しています。

 寺島氏は昨年10月よりTOKYO MXテレビで「寺島実郎の世界を知る力」という番組を放送していますが、世界の動向を知る上で大変役に立つと思います。あわせてご覧いただければと思います。

 その他にも読み応えのある記事が満載です。ご一読いただければ幸いです。