三橋貴明 種子法廃止はモンサント支配に道を開きます

アメリカ・ファーストの安倍首相

 安倍政権の進めてきたTPPや農協解体などは、日本国民ではなく、アメリカやグローバル企業の利益になるものです。今年4月に行われる種子法廃止もその一つです。その意味で、安倍首相はまさにアメリカ・ファーストの政治家と言えます。

 ここでは、月刊日本2月号増刊「日本のお米が消える」に掲載した、経世論研究所所長の三橋貴明氏のインタビューを紹介します。全文は増刊号をご覧ください。

種子法廃止は食糧安全保障の廃止だ

── 種子法廃止法案はなぜ問題なのですか。

三橋 「モンサント法」だからです。モンサントは世界の遺伝子組み換え(GM)種子市場で90%以上のシェアを誇る独占的な企業です。

 GM作物には大きな問題があります。まずは食の安全が脅かされます。アメリカではモンサントのロビー活動の結果、FDA(米医薬食品局)によってGM食品は既存の食品と実質的に同等だから安全だと認められましたが、「実質的」の定義は厳密に評価されていません。GM食品が本当に安全かどうかは分からないのです。

 たとえば中国では、共産党上層部は自分たちのための農場「特供(特別供給基地)」を経営して、安全な食べ物を食べています。一方、アメリカでは金持ちは高価で安全な食べ物が食べられますが、貧乏人は安価で粗悪な食べ物しか食べられません。食の安全が崩壊すれば、日本も一部の特権階級しか安全なものを食べられない国になります。

 さらに、食糧安全保障が崩壊します。モンサントはGM種子の特許を持っており、収穫物からの種採りを認めていません。モンサントのユーザーの農家は毎年種子を買わなければならず、種採りをすると特許権の侵害として訴えられてしまいます。モンサントは種子の特許によって世界中の食糧を支配しようとしていると言っても過言ではありません。

 安倍政権の農業政策には食の安全や食糧安全保障という発想が欠落しているため、最終的に日本は他国に食糧を依存することになります。外国が不作になったらどうするつもりなのでしょうか。

 何より問題なのは、生態系そのものが歪められることです。GM作物を栽培すると、花粉が飛散し、在来種と交配してしまいます。たとえばメキシコではGMトウモロコシを栽培していないのに、奇形のトウモロコシが大量発生しました。そこで在来種を調べたところ、確認した全てのトウモロコシがGMトウモロコシの遺伝子を持っており、純粋な在来種は発見できなかったそうです。

 仮に日本でGMコメの栽培が始まれば、日本古来の在来種が汚染されてしまい、永遠に失われてしまうでしょう。食の安全や食糧安全保障の問題は取り返しがつきますが、生態系の汚染は取り返しがつかないのです。

 種子法廃止法案は、このようなモンサント支配に道を開く「モンサント法」なのです。……