『月刊日本』2021年8月号の紹介

東京五輪 敗戦の歴史に学ばない日本

 弊誌8月号は本日20日より書店販売を開始いたします。
 
 今月号では東京五輪の問題を改めて取り上げました。敗戦の歴史から何を学んだのか――。東京五輪を強行開催しようとしている日本政府の姿を見て、そう思った人は少なくないと思います。

 メディアではしばしば、先の戦争と東京五輪の類似性が指摘されてきました。当時の日本では、東条英機内閣で外務大臣を務めた東郷茂徳や、連合艦隊司令長官の山本五十六などが、米国との戦争に反対していました。しかし、それでも日本は負けが確実な戦争に突入し、多くの犠牲者を出すこととなりました。

 いま目前に迫っている東京五輪に関しても、何人もの閣僚たちが菅義偉首相に中止を迫ったと証言しています(6月25日 朝日新聞デジタル)。しかし、菅首相はそうした声に耳を傾けず、五輪に突入しています。

 日本が米国との戦争を開始したとき、多くの人たちが感動し、解放感を覚えたと証言しています。そのころの日本社会は、泥沼化する日中戦争などにより、閉塞状況に陥っていました。それが戦争によって一気に晴れ渡ったように感じられたのだと思います。

 今日の日本も同じような状況になる可能性があります。新型コロナウイルスの終息がいつになるか全く見通しがつかず、人々の間には不満が鬱積しています。そうした中、五輪で日本人選手が活躍すれば、人々の心は一気に晴れ渡るかもしれません。そうなれば、日本が「五輪敗戦」を迎えることは避けられないでしょう。

 こうした問題意識から、政治学者の白井聡氏、元外交官の東郷和彦氏、現代史家の大木毅氏にお話をうかがいました。

立花隆研究「知の巨人」の虚像

 立花隆氏が亡くなりました。立花氏は多くのベストセラーを生み出し、政治から宇宙まで論じるその関心の広さから、「知の巨人」と称されていました。

 立花氏の逝去を受けて、メディアでは多くの人が立花氏がいかに優れた作家であったかを語っています。立花氏が一時代を築いた人物であることは間違いありません。

 しかし、手放しの称賛は、立花氏を神格化することになりかねません。これは「田中角栄研究」によって角栄の実像を徹底的に暴いた立花氏の望むところではないでしょう。
 
 そこで、今月号では立花氏の功績だけでなく、問題点もあわせて論じました。特に、立花氏が世に出るきっかけとなった「田中角栄研究」は改めて検証する必要があります。それをもって追悼に代えることといたしました。

 本特集では、作家・編集者の佐藤眞氏、評論家の佐高信氏、そして田中角栄の元秘書である朝賀昭氏に思いのたけを語っていただきました。

菅総理は「君側の奸」だ

 また、今月号では亀井静香氏にインタビューいたしました。亀井氏は現在のような状況の中でオリンピックを開催するのは、土砂降りの中で傘もささずに遠足に行くようなものと批判しています。そして、このまま五輪を強行すれば、秋の選挙で自民党は過半数を割ると指摘しています。

 さらに、今月号では元衆議院議員の福島伸享氏に「赤木ファイル」の問題についてお話をうかがいました。国会で安倍晋三首相(当時)から「私や妻が関係していたということになれば、それはもう間違いなく総理大臣も国会議員もやめる」という発言を引き出したのは、福島氏です。

 福島氏は、安倍・菅政権で総理周辺からスキャンダルが絶えない原因は、「公」に仕えるという自覚もない人間が「公」を司る立場に就いているということにあると指摘しています。

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