「親日」に弱い日本人
アメリカの大統領選挙の投票日が迫っています。トランプが勝つにせよヒラリーが勝つにせよ、アメリカの衰退という大きな流れを変えることはできません。アメリカは近く世界戦略の変更を迫られるはずです。
中でもアメリカにとって喫緊の課題は中東戦略です。特に彼らがイランとどのように付き合っていくかということは、今後の国際政治にも大きな影響を与えるでしょう。
これは日本にとっても無関係な話ではありません。日本では日章丸事件などから、イランが親日国家であると捉えられる場合が多いように思います。しかし、政治の指導者たちが、感情のみに基づいて外交方針を決めることはありません。それはプーチン大統領であろうがドゥテルテ大統領であろうが同様です。どうも日本人は外国から「日本のことが好きです」と言われると、すぐにそちらになびいてしまいがちなので、この点は注意が必要です。
アーリア人の直系としてのイラン人
イランについて考える上で忘れてはならないのが、彼らのナチスに対する態度です。中東専門家の山内昌之氏と作家の佐藤優氏は『新・地政学』(中央公論新社)の中で、次のように述べています。
山内 イランを語る時に無視できないのは、彼らの内なる一種のレイシズム(人種主義)ともいうべき潮流です。
佐藤 ヒトラーの『わが闘争』がよく読まれていて、ナチズムに対する忌避感覚もヨーロッパとは違いますよね。
山内 中東専門家の中には「イランの中華思想」と呼ぶ人もいましたが、自分たちはアーリア人の直系だという強烈な認識があるわけです。セム系のアラブだとか傍流のアフガン人とは違うという強固な自負心なんですね。
そもそも、自分たちはアケメネス朝やパルティア、ササン朝以来、アナトリアからギリシャまで統治していた地中海国家である。ギリシャ、メソポタミアやシリア、イラクというのは、その属州に過ぎなかったではないか――。こうした歴史認識が今のシリアへの関与にも、見事に反映しているわけです。
佐藤 まさにペルシャ帝国主義の復活ですね。
これはイスラエルとイランが対立する原因の一つだと思います。もちろん、イランの力が相対的に高まっている中で、イランの存在を無視した中東戦略などあり得ません。日本はいかにイランと付き合っていくべきか、真剣に考えなければならないと思います。(YN)