属国根性のあらわれ
共同通信が11月26日、27日に実施した全国電話世論調査によれば、内閣支持率は60.7%で、前回10月の53.9%から大幅に上昇したことが明らかになりました。共同通信によると、安倍首相がトランプ氏やプーチン大統領らと相次いで会談したことが、支持率アップにつながった可能性があるとのことです。日本では日ロ首脳会談の結果を否定的に報道しているところもありましたので、やはりトランプ氏との会談が大きな影響を与えたのだと思います。
日本ではこれまで、トランプ氏は人種差別主義者であり、日本に強硬姿勢で挑んでくるのではないかと言われていました。しかし、トランプ氏が安倍首相に友好的な態度で接したことで、日本国内におけるトランプ氏の評価はがらっと変わったように思います。トランプ氏に対する警戒感が大きかっただけに、その反動としてトランプ氏の評価が一気に上がり、そのトランプ氏と会談した安倍首相の支持率も上がったということでしょう。
しかし、トランプ氏はビジネスマンなのだから、わざわざ自宅までご機嫌伺いにやってきたビジネス相手を追い返すようなことはしないでしょう。一度友好的に対応されただけでこれだけ評価が激変するというのは、まさに属国精神、属国根性のあらわれです。
ここでは、弊誌12月号に掲載した、京都大学名誉教授の佐伯啓思氏のインタビューを紹介したいと思います。
トランプ政権にも従属する親米保守派たち
── トランプ現象は日本の親米保守派に大きな混乱をもたらしたと思います。彼らはもともとヒラリーに対して批判的でした。それは、ヒラリーが女性の人権や従軍慰安婦問題などで日本に対して厳しい態度をとっていたからです。ところが親米保守派の中には、トランプが大統領になることを恐れ、ヒラリーを応援していた人もいました。
佐伯 私は親米保守派がトランプについてどのように考えているかは知りませんが、彼らが非常に厳しい立場に置かれていることは間違いないと思います。もっとも、彼らがたとえトランプに批判的だったとしても、最終的にはトランプ政権に追従すると思います。
これはいわゆる親米保守に限った話ではありません。トランプは大統領選の勝利演説をした際、これまでのような過激な発言を控え、穏当なコメントをしました。また、選挙直後に安倍首相と電話会談した時には、日本に対して柔軟な姿勢を示したと言われています。そのため、これまでトランプを批判していた日本のマスコミや知識人の中には、「トランプは意外と話ができるのではないか」として、一気に態度を変えた人たちもいます。
しかし、それくらいのリップサービスであれば、トランプであろうと誰であろうとやるものです。少しトランプの印象が変わったくらいでこれまでの態度を豹変させてしまうというのは、トランプ以上に性質が悪いと言わざるを得ません。
安倍首相にしても、それほど急いで会談をする必要があったのでしょうか。トランプがどのような考えを持っているかをじっくり観察し、それから動いてもよかったのではないかと思います。……