日ロ首脳会談は成功したか

本当の意味での「新しいアプローチ」が必要

 本日15日午後6時過ぎより、山口県で日ロ首脳会談が始まりました。プーチン大統領が2時間30分も遅刻するという、現在の日ロ関係を象徴するかのようなスタートとなりました。

 今回の首脳会談において注目すべき点は、言うまでもなく、北方領土返還への道筋をつけることができるかどうかです。プーチン大統領の姿勢は一貫しており、特に大きな変化はありません。そのため、もし日本側の姿勢にも変化がないとすれば、領土交渉は動きません。領土交渉を進展させるには、プーチン大統領を動かすべく、日本側が全く新しいアプローチを行う必要があります。

 しかし、それは安倍首相の強調してきた「新しいアプローチ」とは異なるものでなければなりません。安倍首相の言う「新しいアプローチ」とは東京宣言のことで、特別新しいアプローチではありません。実際、プーチン大統領は11月にリマで記者から「あなたはどのようなアプローチが新しいと考えますか。あなたにとって古いアプローチとは何ですか」と問われた際、「何が古いアプローチで何が新しいのか、私はわからない」と答えています(鈴木貴子衆議院議員のブログより)。

 そのため、今回の会談で領土交渉を動かすためには、本当の意味での「新しいアプローチ」が必要になります。

歴史的一歩を踏み出せ

 また、領土交渉を進展させるためには、もう一つ重要なことがあります。それは、ロシア側が日本に領土を返還した際に、どのような方法であれ、その領土に日米安保が適用されないような形にすることです。もし北方領土に日米安保を適用するならば、ロシアは絶対に領土を返還しません。

 これについて、元外務省主任分析官の佐藤優氏は弊誌12月号で次のように述べています。

佐藤 これも日本政府が表立って言わないことですが、日米安保5条を適用すれば、日本の施政下にある全ての地域に米軍を展開することができます。しかし、もし北方領土に米軍を展開すると言えば、プーチンは絶対に領土を引き渡しません。それだから、北方領土を取り返すためには、日米安保を動かす必要があります。

 これこそプーチンの狙いです。プーチンは領土交渉を通じて、日米安保に楔を打ち込もうとしているのです。それにより、アジア太平洋におけるロシアの影響力を広げようとしているのです。

 しかし、流石の安倍首相もこの問題については及び腰のようです。実際、12月14日付の朝日新聞によれば、11月上旬に行われた谷内正太郎・国家安全保障局長とロシアのパトルシェフ安全保障会議書記の会談において、パトルシェフ氏から、日ソ共同宣言を履行して日本に2島を引き渡した場合に「島に米軍基地は置かれるのか」と問われた際に、谷内氏は「可能性はある」と答えたといいます。もちろんこれは谷内氏個人の見解ではなく、安倍政権の見解と見るべきでしょう。

 しかし、そのような対応をすれば、ロシア側が態度を硬化させるのは当然のことです。その後にリマで行われた日ロ首脳会談がうまくいかなかったのも、この発言が原因だった可能性があります。

 もし今回の日ロ首脳会談で領土問題が進展したとすれば、それは安倍首相が本当の意味での「新しいアプローチ」を行い、北方領土に日米安保が適用されないような形にすることを約束したということです。もし進展しなかったとすれば、これらを実現できなかったということです。

 本稿執筆時点では日ロ首脳会談が成功したかどうかはわかりませんが、安倍首相が覚悟を決め、歴史的一歩を踏み出してくれたことを期待したいと思います。次回は、明日に行われる日ロ両政府による発表と、日ロ両メディアの報道に基づきつつ、日ロ首脳会談の結果を分析したいと思います。

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