安田浩一 取材しない新聞記者

あまりにも遅すぎる打ち切り

 東京MXの「ニュース女子」の打ち切りが決定しました(3月1日 朝日新聞)。あまりにも遅すぎる決断だったと言わざるを得ません。ニュース女子は沖縄の米軍基地反対運動について、ろくに取材もせずに誹謗中傷を垂れ流してきました。これは報道や言論活動と呼ぶことはできません。単なるヘイトスピーチです。

 ここでは弊誌3月号に掲載した、ジャーナリストの安田浩一氏のインタビューを紹介します。全文は3月号をご覧ください。

取材もせずに記事を書くメディア

―― 産経新聞や東京MXの「ニュース女子」、作家の百田尚樹氏など、いわゆる本土では沖縄に対して一方的な批判がなされています。安田さんは『沖縄の新聞は本当に「偏向」しているのか』(朝日新聞出版)でこのような言説の問題を取り上げていますが、こうした議論がはびこる原因はどこにあると考えていますか。

安田 沖縄に対する偏見が最大の理由かと思います。内実を知っているわけでもないのに、「基地に依存した島」、あるいは「基地に抵抗する島」、「地政学的に重要な島」といったように、それぞれが勝手な思い込みで特別な島として位置づけたいという意識が働いているのだと思います。これはリベラルと呼ばれている人たちにも言えることです。私が沖縄の基地問題などを取材していると言うと、リベラルなスタンスの新聞記者からも「沖縄は特別だからね」といった反応が返ってくることが少なくありません。

 もちろん沖縄に足を運び、しっかりと取材している記者もたくさんいます。しかし、自戒を込めて言うなら、多くの人たちはそれぞれ自分の一方的な思いを沖縄に託し、過剰な期待や負担を押しつけてしまっているのではないでしょうか。当たり前の話ですが、沖縄には様々な営みがあり、ごくごく普通の生活を送っている人たちがたくさんいます。そのことが置き去りにされているような気がしてなりません。

 また、メディアの取材力が低下しているという問題もあります。たとえば、私はニュース女子のスタッフたちが取材したと称する場所を同じように回りましたが、彼らが取材をした形跡はほとんどありませんでした。彼らはネット情報に基づいて番組を作ったとしか思えません。つまり、現地に足を運ばず、当事者の話を聞かず、見るべき風景を見ず、感じるべき空気を感じていないということです。そんなものは取材とは呼べません。彼らは自らの取材力のなさを恥じるべきです。これは立場や見解の違い以前の問題です。

 さらに、本土には沖縄に問題を押しつけているという自覚が欠けていることも指摘しなければなりません。マスコミではしばしば「沖縄問題」という言い方がされます。私自身もこの言葉を使ったことがありますし、便宜上使わなければならないときもあると思いますが、この言い方ではあたかも沖縄が問題であるかのように聞こえてしまいます。

 しかし、本当に問題なのは、沖縄ではなく日本です。日本社会が沖縄に対してあらゆる矛盾や被害を押しつけているのです。たとえば海兵隊についても、もともと本土にいた海兵隊を反対運動によって追い出した結果、現在のように沖縄に定着したという動かしがたい事実もある。基地被害をきっかけに生まれた本土の反対運動は必然でしたが、そこに政府の思惑も重なり、結局、海兵隊は沖縄に押しつけられた。それによって沖縄で様々な問題が生じるようになり、そしていま新たに辺野古に基地が作られようとしているのです。これは保守や革新、右や左といった立場と関係なく、本土に住む一人一人が真剣に考えなければならないことだと思います。……