安倍政権におもねるメディア
日本のメディアの多くは安倍政権におもねり、安倍政権の手先に成り下がってしまっています。『新潮45』のような雑誌ですら、「『反安倍』病につける薬」という特集を組み、「安倍政権は『バカ発見器』である」などといった記事を掲載するようになっています。どうやら安倍政権を批判している人たちはみなバカだと言いたいようです。
しかし、バカと言うなら、それは安倍政権におもねる人たちにこそ言うべきでしょう。ここでは、作家の適菜収氏と哲学者の山崎行太郎氏の対談を紹介したいと思います。全文は3月号をご覧ください。
産経に報道機関を名乗る資格はあるか
山崎 今回の対談はマスコミの問題から始めたいと思います。昨年の12月に産経新聞が沖縄の米海兵隊曹長が人身事故にあったことを取り上げ、この曹長は日本人を救出しようとして事故にあったにもかかわらず、沖縄二紙がこのことを報じていないと非難し、「これからも無視を続けるようなら、メディア、報道機関を名乗る資格はない。日本人として恥だ」と断じました。
ところが、沖縄二紙が米軍と沖縄県警に確認したところ、両者ともそのような事実は確認できていないと答えたそうです。つまり、産経新聞はろくに取材もせずに捏造記事を書いた可能性が高いということです。
適菜 産経新聞の見出し風に言えば、「大ブーメラン」ですね。産経新聞は朝日新聞の慰安婦報道などをめぐって、朝日新聞は捏造体質だと散々批判してきました。しかし、いまや産経自身が捏造体質になってしまっています。
今回の件に限らず、産経の沖縄に関する報道は非常に歪んでいます。同じ日本人、同胞であるにもかかわらず、米軍を批判するメディアや人々に対し、「反日」のレッテルを貼る。
その背景について考えてみたんですが、産経はネトウヨ(ネット右翼)、あるいはネトウヨレベルの読者をターゲットにしたビジネスに軸を移したからだと思います。
いまの日本社会にはネトウヨが溢れていますよね。普天間基地の近くの小学校に米軍のヘリの窓が落下する事件が起こったとき、学校側に「どうせやらせだろ」とか「基地の近くに小学校があるのが悪い」といった電話が何本もかかってきたそうです。下手をすれば子供が死んでいたかもしれないのに、米軍ではなく学校側に苦情を入れているんです。
ネトウヨは、右翼ですらない。単に日々の鬱憤やルサンチマンを社会的弱者にぶつけているだけです。産経はそういう人間に向けて記事を書くようになって劣化した。
山崎 最近ではネトウヨをターゲットにした本が一定数売れているから、彼ら向きの記事を書けば新聞も売れるかもしれないと考えているんでしょうね。完全に商売です。
適菜 ただ、産経も最初は商売のために意識的にネトウヨ受けする記事を書いていたのでしょうが、いまやネトウヨレベルの記者が与太記事を書くようになった。産経新聞の見出しを見るとわかるのですが、ネトウヨのブログとそう変わらない。「森友学園問題でも民進党ブーメラン」とか「韓国最大野党幹部、安倍首相の正論を認めず」というのもありました。産経新聞って一応は公の新聞でしょう。実態はファンクラブの会報だったとしても。
山崎 普通だったら恥ずかしくて使えないような言葉でも、平気で使ってしまっていますね。ネトウヨの世界でしか通用しない言葉ですが、それが一般社会でも通用すると思っているんでしょうね。……