世界に拡がる薬害 子宮頸がんワクチン

 昨年12月14日、子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)接種後の健康被害を訴える15~22歳の女性が国と製薬会社2社に損害賠償を求め、東京、名古屋、大阪、福岡各地裁に第2次提訴を行った。7月の第1次提訴を含めた原告は、合計119人に上った。

 先月号で伝えたように、実際に子宮頸がんワクチン接種後の症状に苦しむ少女たちを診療する医師の研究グループは、ワクチン接種と症状との因果関係を認める立場に立ち、新たな病態として「HANS」(HPVワクチン関連神経免疫異常症候群)を提唱している。

 だが、厚労省、WHO、製薬会社などは、依然として子宮頸がんワクチン自体の安全性に問題はないという立場だ。またその裏で、ワクチンに不都合な情報を排除していた事実が明らかになっている。なぜ彼らは子宮頸がんワクチンの「安全神話」にしがみつくのか。今月号では子宮頸がんワクチンの危険性と推進派の情報操作の実態に迫った。

「神経障害」は世界的薬害事件の引き金になる

 「HANS」研究グループの研究成果は、子宮頸がんワクチンが「神経障害」を引き起こす可能性を示唆している。だが、厚労省は「子宮頸がんワクチンは危険ではない。安全だ」という立場を崩さない。なぜ厚労省は素直に研究グループの知見を取り入れないのか。匿名を条件に、ワクチンに詳しい免疫学の専門家A氏に話を聞いた。

―― HPVワクチンに神経障害の可能性が出て来ました。

 HPVワクチンが「神経障害」を引き起こす可能性が出てきたのは致命的だ。これは世界的な子宮頸がんワクチン問題に止めを刺す「爆弾」になりうる。

 本来、薬は患者に打って病気を治すものだ。その代わりに副作用が出るのは仕方がない。しかし神経障害の副作用は絶対に認められない。薬の世界では、神経障害の副作用は死よりも重いとされている。神経障害は死よりも苦しい生を強いるからだ。

 たとえば人間は癌を治す代わりに痴呆になることを望まない。抗癌剤は痴呆どころか食欲不振の副作用があっただけで認可されない。極論だが、神経毒性を持つ薬は「薬」にならない。

 ましてワクチンは健常な人間に打つものだ。しかも動物感染実験やヒト癌化実験のできないHPVワクチンは癌を予防するものではなく、性感染症の一部を予防すると想定されているものにすぎない。HPVワクチンが健常な人間に性病を予防する代わりに神経障害を起こしたとなれば、未曽有の薬害や人権問題になるだろう。実際に過去の薬害事件は、ほとんどが神経障害や奇形が引き起こされ、クオリティ・オブ・ライフ(人生の質)が損なわれたケースだ。神経毒性の副作用は薬ならば販売後だろうが認可取り消しだ。ワクチンの場合、薬のように認可取り消しになるか定かではないが、その可能性はある。

 HPVワクチンの認可が取り消されれば、製薬会社は吹っ飛ぶ。同ワクチンに社運を賭けた英グラクソ・スミスクライン社は株価暴落、下手すれば倒産だ。そんなワクチンを推奨したWHOと国、医師の信頼は地に落ちる。このワクチンを導入した世界各国でも問題化して世界的な薬害事件に発展するはずだ。

 厚労省は認可を取り消さず、HPVワクチン添付文書の副反応項目に「神経障害」と書き加えるだけで済まそうとするかもしれないが、認可取り消しの圧力は続くだろう。

 当然、厚労省は世界的薬害事件の引き金を引きたくない。だから厚労省、WHO、製薬会社はHPVワクチンの神経障害を絶対に認めないだろう。 

―― 神経障害の可能性を示した研究の方が間違っている可能性はないのですか。

 その可能性は低い。製薬会社はワクチンの安全性を動物実験で評価するが、研究グループは患者、語弊を恐れずいえば生身の人間を診察・治療する中で臨床評価しているからだ。ワクチンの神経作用について、申請時に薬理(薬・ワクチンのメカニズム)しか見ていない製薬会社は、人間を見ている臨床研究グループの臨床評価に敵わないはずだ。

 国もHPVワクチンの薬効や安全性は独自に評価できていない可能性が高い。国としての薬理解析や感染実験は、厚労省に所属する国立感染症研究所が行っている。だから国がワクチンを販売認可する際は、国の検定機関である感染研が国家検定を行うが、行わない場合もある。HPVワクチンは検定を受けたかどうかは分からない。

 さらに問題は、感染研の検定はワクチンの規格を評価するものにすぎず、安全性を評価するものではないということだ。国としてHPVワクチンの薬効や安全性を科学的に評価できていないならば、無責任極まりない。

 厚労省の副反応検討部会はHPVワクチンの有効性と安全性に問題はないと考えているが、感染研はどう考えているのか。「製薬会社のデータではそうなっています」と言うかもしれないが、それならば他人の言葉を信じるかどうかという占いの話であって、科学の話ではない。

 そもそもHPVは未だに謎の多いウイルスだ。特にグラクソが製造販売する「サーバリックス」は、世界初の昆虫細胞培養株と昆虫ウイルスで作られたHPVの遺伝子組み換えワクチンだ。今まで世界に存在しなかった物質に侵入された人体が過剰反応し、神経障害、免疫障害を起こしても不思議ではない。

 先日、『日経新聞』(1月12日付)がアステラスの新型ワクチン中止を報じた。アステラスはバイオベンチャーUMNファーマと共同で、昆虫細胞を使った開発した新型インフルエンザワクチンの承認を申請していたが、2年半以上認可されなかったという。国はHPVワクチンの副反応を見て、昆虫由来ワクチンに慎重になっている可能性がある。

―― 本誌は感染研に「ヒトパピローマウイルスの性質、子宮頸がんワクチンの有効性及び安全性に関する貴研究所の見解等について」取材を申し込みましたが、「所内の関係部署に確認をいたしましたが、大変申し訳ございませんが、お申込みいただいた内容につきましては厚生労働省の委員会で検討がなされている段階であるため、取材をお受けできない状況でございます」と断られました。

 つまり国は国民に対してHPVワクチンの有効性と安全性に関する情報を出せないということだ。感染研は国立だから、国民の疑問に答える義務がある。「厚労省で検討している段階」だからその義務が果たせないというならば、HPVワクチンは科学的問題ではなく政治的問題だということだ。……