日米二国間交渉を断固拒否せよ

自民党の反主流派を後押しせよ

 1月27日の衆院予算委員会で、安倍首相はトランプ大統領が主張している二国間交渉について、「絶対に排除するのかと言われれば、そうではない」と述べました。また、安倍首相は「米国だけでなく、様々な2国間の交渉で(日本が)一方的に譲歩することにはならない。国益を最大化する最善の道を取っていく」とも答弁しています(1月28日付読売新聞)。

 トランプ大統領がTPPをやめて二国間交渉を進めようとしているのは、TPPよりもさらに多くのものを獲得しようとしているからです。TPPでさえロクに権益を守れなかった安倍政権が、果たしてTPP以上に強引な交渉を進めようとしているトランプ政権に対抗できるのか、心もとないと言わざるを得ません。

 いま日本に必要なのは、二国間交渉を拒否するか、あるいは二国間交渉を有利に進められるような体制を整えることです。そのためには、野党が協力して安倍政権に立ち向かうことに加え、与党内の反主流派を後押しする必要があります。自民党内にも二国間交渉に批判的な議員はたくさんいます。

 ここでは、弊誌1月号に掲載した、自民党の山田俊男参議院議員のインタビューを紹介したいと思います。全文は弊誌1月号をご覧ください。

日米二国間交渉はやるべきではない

―― 山田さんは12月1日の参議院TPP特別委員会で、アメリカのトランプ次期大統領が日米二国間交渉を求めてくる可能性を指摘し、警鐘を鳴らしています。日米二国間交渉のどこに問題があると考えていますか。

山田 日本はこれまでもアメリカと多くの二国間交渉を行ってきました。例えば、繊維交渉や牛肉・オレンジ交渉、自動車交渉、半導体交渉などです。しかし、ほとんど全ての交渉において、日本はアメリカに押されっぱなしだったと思うんですね。

 もしトランプ政権と二国間交渉を行うことになれば、これまで以上に難しい交渉になると思います。トランプ氏は大統領選の最中に、日本に対して米軍駐留費をさらに負担するように求めていました。もちろん日本はきちんと防衛負担を行っているわけですから、そんなふうに言われる筋合いはないんですよ。しかし、二国間交渉に安全保障問題を絡められれば、日本は非常に厳しい状況に追い込まれてしまうと思います。

 そして、日米二国間交渉如何で、アメリカの農産物やGMO(遺伝子組み換え)食品等が大量に入ってきて、日本の農業だけでなく国民の食の安全安心に大打撃を与えることになります。これは日本が大切にしてきた「世界各国の多様な農業の共存」という理念にも反することです。日本はこれまでアジアやアフリカ、ヨーロッパなど日本と同じ課題を抱える国々と連携し、それぞれの国の事情に配慮しながら多面的な経済連携協定を進めてきました。WTOのドーハ・ラウンドでも、残念ながら合意には至りませんでしたが、この理念は活かされていました。

 こうした多国間交渉では、日本は世界各国と連携することでアメリカの要求を食い止めることができます。TPP協定は不十分なところはいっぱいありますけれども、それでも二国間交渉よりはましだと思います。だから、私はアメリカから二国間交渉を求められても断固として拒否すべきだと総理に申し上げたわけです。

―― 自民党内では日米二国間交渉はどのように捉えられていますか。

山田 自民党議員はこれまでの日米二国間交渉で妥協を強いられてきたという経緯を知っていますから、みんな二国間交渉はやりたくないと思います。また、日米二国間交渉では、農業だけでなく、投資やサービスの問題なども取り上げられる可能性があるので、なおさらやりたくないでしょう。