菅沼光弘 領土紛争はアメリカが仕掛けた

アメリカの傭兵と化した陸海空・三自衛隊

―― 野田総理はオスプレイの配備について、「日本側からアメリカに対してどうしろこうしろと話はできない」と語るなど、アメリカへの従属度を強めている。

菅沼 オスプレイのような装備品の配備は日米安保条約上、事前協議の対象とならず、我が国政府や地方自治体にその配備を拒否する権利はない。したがって、野田首相の言動は、当然といえば、当然だ。だが、問題は、こうした法律論や抑止力論といった「あるべき論」と、国民感情との乖離だ。

 東西冷戦は終結したが、未だに国内に巨大な米軍基地が存続し、日米同盟の深化という名目で、我が国は軍事的にも、経済的にも、ますますアメリカの従属下に置かれようとしている。これは誰が考えてもおかしい。

 また、ここ最近自衛隊と米軍の軍事協力も急速に進められている。日米同盟の深化などといわれているが、その実体は米軍と自衛隊の一体化だ。要するに、自衛隊は米軍の先兵となり、米兵の肩代わりもしろということだ。

 もっとも、これは自衛隊設立当初からアメリカが目論んでいたことでもある。

 たとえば、海上自衛隊の編成や装備は、対潜能力や掃海能力だけが突出するなど、発足当初から極めて歪なものとなっていた。これは、海上自衛隊をアメリカ海軍第7艦隊の補完部隊として利用しようというアメリカの意図が働いていたからだ。

 また、航空自衛隊はもともとアメリカ空軍をモデルに創設されたものだ。アメリカ式の教育を徹底的に叩きこまれ、アメリカの戦闘機とミサイルを運用して作戦行動すべく訓練されてきた。最近、航空総隊司令部は米軍横田基地内に移転し、運用を米軍と一体化した。

 唯一独自性を保っていた陸上自衛隊も、今や海兵隊とテニヤンで合同訓練を行ったり、アメリカ陸軍第一軍団司令部がキャンプ座間に移転され、陸上自衛隊中央即応集団司令部と統合運用されることになるなど、その一体化が着々と進んでいる。

―― 野田政権は島嶼防衛を理由に日米同盟の強化を進めている。

菅沼 日本が領有する島嶼に対する周辺諸国の圧力が強まっているのは事実だ。北方領土交渉はプーチン政権誕生後も進展しておらず、竹島における韓国の実効支配は強化されつつあり、尖閣問題は中国の強硬な主張を前に、もはや「領土問題」であると国際社会から認知されるようになってしまった。

 これらの国々を批判し、反論することは簡単だ。しかし、そうすれば、これら周辺諸国との関係はますます悪化する。これは我が国の国益にかなうことなのか、どうか。我々は、その前に、なぜこうした問題が生じたのか、まずはその原因を知らねばならない。

(中略)

アメリカは韓国の竹島領有を黙認した

―― 二国間に火種を植えつけ対立をあおり、国際政治をコントロールする。それがアメリカの常套手段だ。

菅沼 それは何も北方領土問題に限った話ではない。竹島問題も同様だ。

 1952年1月18日、韓国の李承晩大統領はサンフランシスコ講和条約発効の直前に、一方的に「平和ライン」なるものを設定した。いわゆる「李承晩ライン」である。このラインの中には竹島も含まれていた。こうして、韓国は竹島の領有権を主張するようになり、その海域で漁業を営んでいた日本の漁船が、領海侵犯ということで、次々と拿捕されることまで起こった。拿捕された日本漁船は326隻、抑留された日本漁民は3904人に上る。

 当時、日本は未だ占領下にあったため、韓国に対して独自に対抗手段を講じることはできなかった。また、アメリカが占領統治している以上、こうした韓国の言動に抗議し、適切な処置をとるのはアメリカの役割であったはずだ。しかし、アメリカは何ら手を打たず、李承晩の振舞いを黙認したのである。これが竹島問題の始まりである。

 朴正煕大統領の時代に、日韓国交正常化交渉が行われ、竹島問題解決のチャンスがあった。実際、朴大統領は、「両国友好のために、あんな島など沈めてしまえ」とまで述べていたと言われている。

 しかし、李承晩ラインは日韓漁業交渉の枠組みの中で解消されたが、領土問題としての竹島問題は解決されることはなく、棚上げされることになった。この時、調印されたのが日韓基本条約である。ここにもアメリカの意向が強く働いている。……

以下全文は本誌9月号をご覧ください。