検察は公判を維持できるか
日産のゴーン氏逮捕をめぐっては、国際社会からも非難の声があがっています。検察はなんとか有罪に持ち込みたいと考えているようですが、果して公判を維持できるのか見通しがつきません。もし有罪に持ち込めないような事態になれば、検察の威信は地に落ちるでしょう。
もっとも、検察の捜査に問題があるからといって、ゴーン氏の経営手法が褒められたものでなかったことも事実です。ここでは弊誌2019年1月号に掲載した、元衆議院議員の亀井静香氏のインタビューを紹介します。全文は1月号をご覧ください。
ゴーン事件のきっかけを作ったのは私だ
―― 今回の事件は2010年に導入された1億円以上の役員報酬の開示制度がきっかけで起きたものですが、実はこの制度を作ったのは当時金融担当大臣だった亀井さんでした。どういう思いでこの制度を作ったのですか。
亀井 私は今回の事件のきっかけを作ったわけだけど、企業経営者というのは社会的な存在、公の存在でしょう。特に1億円以上の報酬をうけるような大企業の経営者は、それだけ大きな社会的責任を負っているんだから、仕事の対価である報酬を公開するのは当然です。それによって報酬に値する仕事をしているかどうか、それに相応しい社会的責任を果たしているかどうかが社会的に評価できるわけだ。高額報酬をうける経営者はそれに耐えられるくらいでないといかん。報酬に値する仕事をしていれば誰も文句は言わないよ。
―― ゴーン氏の年収は約20億円でしたが、高額報酬という批判を避けるために、10億円は退任後に支払うと合意していました。検察はその点を虚偽記載として問題視しているわけですが、ゴーン氏の報酬は相応しいと思いますか。
亀井 ゴーンさんがどういう気持ちで報酬を少なく見せようとしたのかは分からんけど、彼の経営手法には共感しないな。従業員の首をどんどん切っていって、自分だけ高い給料をもらうようなことをやっていたんだから。
その中でゴーンさんが違法なことをやっているなら司法的に処断する、これはいいですよ。だけど、もらってない報酬を記載しなかったというだけだったら難しい。検察は不本意ながら私の作った制度でゴーンさんを引っかけたわけだけど、これだけだったらどうしようもない。
―― 昨秋以来、日産は無資格検査やデータ改ざんなど不祥事が続き、12月7日には新たな検査不正が発覚しました。
亀井 行き過ぎたコストカットで人手が不足しているんだろうな。ゴーンさんのようにドンドン社員の首切りをやって、合理化という大義名分のもとで社員いじめをやると、そういうことが起きてくるんだよ。検査は機械に代替できないからね。機械が正常に動いているかどうかを機械が検査するというわけにはいかない。やはり最後は人間です。検査員が自分の目で確かめるしかない。それを減らしていけば、こういう問題は必ず起きてくる。そういう意味では、ゴーンさんの〝闇〟というのは、報酬の問題じゃなくてこっちの問題の方にあるのかもしれない。……