なぜ今、創価学会公明党なのか
―― 佐高さんは新著『自民党と創価学会』(集英社新書)を出版されました。なぜ今、創価学会なのですか。
佐高 昨年、安保法案という名の戦争法案が強行採決されました。世間的には安倍自民党が強行したと考えられていますが、そこには共犯者がいたのです。創価学会公明党です。
公明党は自民党の影に隠れて「平和の党」を装っていますが、戦争法案に加担した「戦争の党」ですよ。自民党が主犯で、公明党は従犯という図式ではない。自公は共犯なのです。
かつて評論家の藤原弘達は1969年に『創価学会を斬る』という本を出しました。その中で藤原は「創価学会は自民党との連立を狙っているのではないか」と追及したうえで、自民党の「右翼ファシズム的要素」と創価学会の「宗教的ファナティックな要素」との間に「奇妙な癒着関係」ができれば、「日本の議会政治、民主政治もアウトになる」と危機感を露わにしたのです。
そして自民党タカ派と創価学会の連立である安倍政権において、まさに藤原の危機感は現実化している。今こそ自民党と創価学会の関係をえぐり出し、自公連立の始まりを捉え直した上で、その本質に切り込む必要があるわけです。
―― 安倍自民党を考えるためには、創価学会公明党を考える必要がある。
佐高 自公連立は一言でいえば「水と油の野合」です。自民党は野党共闘を野合と批判していますが、自公連立こそ理念なき野合の最たるものです。
そもそも自民党は学会を批判していたじゃありませんか。自民党の機関紙「自由新報」は1994年から95年にかけて、「公明党=創価学会の野望」と題する大型連載を組んでいました。「権力の中枢に巣食う宗教家至上主義集団」、「宗教の〝衣〟で隠す悪徳商法」、「使命忘れ沈黙続ける〝大〟新聞」など、計20回に渡って激烈な学会批判を繰り広げていたのです。
ところが、自民党はそれから5年後の1999年に手の平を返して自自公を経て自公連立政権を築いていく。こういうメチャクチャなことになった原点には、「密会ビデオ」問題というものがありました。
もともと学会は日蓮正宗の信徒団体で、静岡県富士宮市の大石寺を拠点として寺院や墓地絡みの土地転がしや建設工事で利権を貪っていた。そこは山口組切っての武闘派・後藤組のナワバリだったので、学会の揉め事は後藤組が片付けていたわけです。その中で学会と後藤組の間にイザコザもあったが、公明党の藤井富雄がパイプ役として後藤組組長の後藤忠政と密会を重ねながら、両者の関係は続いていった。
そして1996年、この二人の密会ビデオが自民党に流れるわけです。当時「公明」代表だった藤井は弱みを握られた。それで自民党は野中広務を中心に揺さぶりをかけ、自公連立の流れができたのです。野中は自公連立について「叩きに叩いたら向こうからすり寄ってきた」と答えたそうです。
公明党は自民党に屈服する形で連立を強いられたのです。つまり自公連立の始まりから公明党は「平和の党」として死んでいたということです。
それ以後、公明党は看板を偽りながら、1999年の周辺事態法、2003年のイラク特措法、そして昨年の戦争法に唯々諾々と賛成票を投じている。「戦争の党」以外の何物でもない。
安倍と創価学会はズブズブの関係だ
―― 自公連立で公明党は変質したのですね。
佐高 そして自民党もまた変質したのだな。まず自民党は「自由と民主主義」という理念を捨てました。
そもそも公明党は創価学会政治部、あるいは池田大作の私党にすぎず、自由も民主主義も存在しない。公明党議員に「池田大作を批判できるか」と問い詰めれば、恐らく全員が黙り込むでしょう。特定の人物を批判する言論の自由を持たない公明党に自由はない。また、選挙ではなく学会の指名で代表を選ぶ公明党に民主主義はない。
こういう公明党と連立を組んだ瞬間から、自民党は「不自由非民主党」に堕落したのです。実際、戦闘的ハト派として知られた白川勝彦は自公連立に異を唱え、「政権にありつくために、また政権を維持するために、自由主義者としての誇りだけでなく保守としての矜持をも捨てた自民党」を離党しました。
また自民党は学会票に依存する政治団体に変質しました。白川は連立以降、自民党は学会票を盾に取って言うことを聞かない議員を脅すようになったと話し、また1998年の総裁選で小渕恵三に敗れた梶山静六は「小渕内閣は必ず公明党と組むぞ。その窓口には野中がなる。公明票がなければ当選できないから、みんな野中に頭を下げなきゃならなくなる。だからこれから野中が政界を支配する時代が続く」と語っていました。
今や学会票なしで当選できる自民党議員はほとんどいないでしょう。「創価学会公明党を制する者が自民党を制す」という構造ができている。現在は野中の代わりに官房長官の菅義偉が公明党の頭越しに学会副会長の佐藤浩とつるんで自民党に睨みを利かせているというわけです。……
以下全文は本誌6月号をご覧ください。
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