小川寛大 日本から神社が消える日

神社本庁は「安倍政権の黒幕」なのか

 弊社はこのたび、『宗教問題』編集長・小川寛大氏の著書『神社本庁とは何か 「安倍政権の黒幕」と呼ばれて』を刊行いたしました。なぜ神社をめぐる不祥事が増えているのか、「安倍政権の黒幕」とまで呼ばれる神社本庁の実力はいかほどなのか、そもそも神社本庁は「安倍政権の黒幕」なのか、その背景を余すことなく論じていただいております。

 本書の刊行に先立ち、弊誌10月号では小川氏のインタビューを掲載いたしました。併せてお読みいただければ幸いです。

なぜ神社絡みの事件が頻発するのか

―― 小川さんは近日、新著『神社本庁とは何か』(K&Kプレス)を出版します。なぜいま神社本庁をテーマにしようと思ったのですか。

小川 ここのところ富岡八幡宮の女性宮司が実の弟に殺害される事件など、神社をめぐる社会的事件が頻発しています。その際、当該神社と神社本庁の関係が取り沙汰されることも増えています。また、神社本庁が盛んに右派的な政治活動を行っていることにも注目が集まっています。

 しかし、神社本庁に関する報道には誤解を含むものが多々あります。多くの人たちは神社本庁のことをよく知らないでしょうから、誤った報道をそのまま鵜呑みにしてしまう恐れがあります。また、神社本庁を賞賛するにせよ批判するにせよ、きちんと実態を把握せずに論じるのは健全とは言えません。

 私は神社本庁のインサイダーではありませんが、長年にわたって宗教界を取材してきました。こんなことを言えば格好つけていると思われるかもしれませんが、普通の人以上には神社本庁のことも知っているつもりです。そこで、神社本庁の組織構成や傘下の神社の現状などを論じることで、神社界、神社本庁とは何かということを明らかにしたいと考えました。

 実は神社絡みの事件が増えていることと、神社本庁が政治活動をやっていることは、決して無関係ではありません。

 戦後長く、神社本庁はやたらと政治の世界に首を突っ込み、政治活動の比重がどんどん高くなっています。確かに政治活動には魅力があると思います。有名な政治家や知識人と知り合いになれるし、マスコミから取り上げられることもあります。その中では文化人として扱ってもらえる場合もあります。

 しかし、政治は決して綺麗な世界ではありません。お金も飛び交うし、権力抗争も起こります。全てを政治に結びつけることはできませんが、こうした政治活動が神社内の内紛に関係していることもあります。

 また、神社本庁は政治活動にのめり込むようになった結果、本業の宗教活動が疎かになっているようにも感じます。神社本庁は全国およそ8万の神社を統括しており、傘下の神社の安定に貢献することが最も重要な仕事であるはずです。

 しかし、これらは活動としては地味なものです。政治家と付き合えるわけでも、お金が儲かるわけでもありません。そのため、一度政治活動の高揚感を知ってしまうと、どうしても地味な活動からは遠ざかってしまうのでしょう。

 もちろん神社本庁が宗教活動を何もしていないというのは言い過ぎですが、足元を見失ってしまっていることは否定できません。それが神社界で不祥事が頻発する一因になっていると思います。……