河合弘之 米国での裁判で福島原発事故の真相が明らかに

米国で画期的な裁判が始まった

 いまアメリカで画期的な裁判が行われています。「トモダチ作戦」に参加して被爆した元米兵ら157人が、東京電力などに対して損害賠償などを求め、アメリカのカリフォルニア州連邦裁判所に提訴したのです。この裁判の結果は日本の原発政策にも影響を与えるはずです。

 ここでは、弊誌10月号に掲載した、弁護士で映画監督の河合弘之氏のインタビューを紹介したいと思います。全文は10月号をご覧ください。

アメリカで裁判が行われることになった理由

―― 福島原発事故の際に米原子力空母「ロナルド・レーガン」の乗組員として「トモダチ作戦」に参加して被爆した元米兵ら157人が、東京電力などに対して損害賠償などを求め、アメリカのカリフォルニア州連邦裁判所に提訴しました。この裁判はアメリカと日本のどちらで行うべきか管轄争いがなされていました。

河合 東電や東芝は、「日本で起きた事故によって日本で被害を受けたと言っているのだから、裁判は日本で行うべきだ」と主張してきました。日本政府も「アミカス・キュリエ(amicus curiae)」という第三者が裁判所に意見を提出する制度を用いて、「日本には公平な裁判制度があるため、日本で裁判を行っても元兵士たちは十分に保護されます」として、東電や東芝を援護していました。

 これに対して、私もアミカス・キュリエを用いて、「日本で裁判を行ったらとんでもないことになる」という意見書を書いたんです。日本の裁判には印紙代という制度があって、裁判を起こすのに手数料としてお金がかかることになっています。金額で言うと、原告全員で2億円近く払わなければなりません。原告の元米兵たちは経済的に困窮しているため、とてもそんなお金を払うことはできません。そのため、日本で裁判を行うことになると、門前払いを食らう可能性があったのです。

 アメリカの裁判官たちは私の意見書にびっくりしたそうです。アメリカでは裁判を受ける権利が重視されているため、印紙代は必要ありません。世界的に見ても、印紙代という制度がある国はほとんどありません。彼らはまさか日本の裁判に「入場料」が必要だとは考えてもいなかったのでしょう。私の意見書の影響もあってか、管轄はカリフォルニアということに決まり、近く本格裁判が始まります。

―― 原告たちは50億ドル(約5450億円)の基金の創設を求めています。

河合 これはクラスアクションと呼ばれるものです。クラスアクションでは、裁判の原告になっていなくとも、同じ被害を受けたとみなされた場合は救済が受けられることになっています。この制度は非常に良いものなのですが、日本にはありません。そのため、日本で裁判を行うと、被害者全員が平等に救済を受けられないことになってしまいます。

 トモダチ作戦に従事した元米兵たちの中にはすでに亡くなった人もいます。原告の中からも死者が出ており、弁護団や原告団は危機感を強めています。元首相の小泉純一郎さんは元米兵たちのために寄付を集めるなど熱心に活動していますが、その小泉さんが言うように、日本を助けにきてくれた人たちがそんな酷い目にあっていることを放っておくわけにはいきません。被害者たちのためにも、アメリカで裁判が行われることになって非常によかったと思っています。

原発事故と健康被害の因果関係が認められる

―― 裁判では主にどのようなことが争われることになっているのですか。

河合 この裁判の重要なところは、福島第一原発事故と甲状腺ガンや白血病などの健康被害の因果関係を主張する、最も大規模な、また唯一とも言える裁判だということです。日本では裁判所が行政も決して因果関係を認めようとしません。放射能はガンを起こすとなると、放射能は恐い、原発は恐い、再稼働はやめようということになるからです。

 彼らは被害者たちに因果関係を証明しろと言っているんです。しかし、そんなことは不可能なんですよ。福島原発事故の際に福島第一原発から出た放射性物質が喉に付着し、それが甲状腺ガンを発症させたということを立証することなどできるはずがありません。

 しかし、アメリカの裁判ではこの因果関係が認められる可能性が非常に高いと思います。アメリカ社会は、何が何でも原発を維持しなければならない、原発が恐ろしいものだという意識を持ってもらっては困るとは考えていないからです。……