村上正邦 拉致問題 ―「残酷な事実」と向き合う覚悟はあるか

朝鮮半島情勢は複雑怪奇

 6月12日に予定されていた米朝首脳会談が中止になりました。まさに朝鮮半島情勢は複雑怪奇と言わざるを得ません。今後事態がどのように推移していくか予測はつきませんが、日本にとって重要なのは拉致問題と核問題、ミサイル問題を解決することです。安倍首相はこれらの問題を解決するために全力を尽くしているのかもしれませんが、政治は結果責任の世界です。たとえ全力を尽くしていたとしても、それが結果に結びつかないのであれば、責任をとらなければなりません。

 ここでは弊誌6月号に掲載した、参議院自民党議員会長の村上正邦氏のインタビューを紹介します。全文は6月号をご覧ください。

安倍総理の責任はどこへ行った!

―― 朝鮮半島が激動しています。その中で安倍総理は拉致問題の解決を強調しています。

村上 安倍政権の対応は疑問です。安倍政権は「拉致問題の解決に全力をあげる」なんて言っていますが、それでは拉致担当大臣は拉致問題の解決に向けて、どこで何をやっているのか。国民の多くは拉致担当大臣の名前さえ知りませんよ。

 私は拉致問題が社会的に取り上げられる前から、この問題に取り組んできました。1997年には私が呼びかけ人の一人になって、「北朝鮮拉致疑惑日本人救済議員連盟」(旧拉致議連)が発足し、翌年には「北朝鮮に拉致された日本人を早期に救出するために行動する議員連盟」(新拉致議連)として再スタートしました。

 私は当初から「日本政府は平壌に連絡事務所を置いて、担当者を常駐させるべきだ」と訴えてきました。「同胞を取り戻さない限り、二度と祖国の土は踏まないぞ」という覚悟で平壌に乗り込まなければ、拉致被害者は取り戻せるはずがないという思いからです。東京にいながら拉致問題の全容が解明できるのか、日本国内でブルーリボンバッジをつけながら北朝鮮を非難するだけで拉致被害者を取り戻せるのか。この思いは今でも変わりません。

―― 安倍総理は先日、「南北、米朝首脳会談の際に拉致問題が前進するよう、私が司令塔になって全力で取り組んでいく」と訴えました。

村上 それはおかしな話です。日本国民に対して責任を持っているのは、どの国の誰なのか。アメリカのトランプ大統領なのか、韓国の文在寅大統領なのか。私は日本国総理大臣の安倍晋三だと思う。拉致問題は、安倍総理が直接金正恩に直談判すべき問題です。それをしない、それができないということは、安倍総理が日本国の最高指導者としての責任を放棄している、あるいはその能力が不足しているということではないでしょうか。

 安倍総理は「蚊帳の外」に置かれているからこそ、「蚊帳の中」にいるトランプ大統領や文在寅大統領に「拉致問題を取り上げてください」とお願いしているということです。そういう状況で「司令塔になる」と強がっても、国際社会の失笑を買うだけではありませんか。

 そもそも安倍総理は「日米は100%一体だ」と言っていますが、これも同じことです。日本の運命をアメリカに委ねるならば、日本国の最高指導者としての責任の放棄であり、自覚の欠如であると言わざるをえません。また、もしも「日米は100%一体」ならば、北朝鮮はアメリカとだけ対話すれば十分なのであって、日本と独自に対話する必要はありません。このような態度は独立国として恥ずべきことです。

 安倍総理は日本の最高指導者としての責任感と自覚の無さに対して懺悔の念を持つべきです。そして懺悔の念を持つならば、今からでも遅くはありません、安倍総理が直接乗り込んで金正恩に直談判すべきです。……