二階俊博 先人が木を植え、のちの人が木陰で涼む

文化交流で凍りついた日中関係をほぐす

―― 二階議員は10月下旬に中国を訪問し、31日には劉延東副首相と隣席でNHK交響楽団(N響)の北京公演を鑑賞したと報じられています。この北京公演は二階議員の尽力によるものだと聞いています。

二階 今回の北京公演に先だち、N響は2014年6月に韓国でも演奏会を行っています。この公演を開催するために一生懸命やっておられたのが、韓国のアシアナ航空の朴三求会長です。私は朴会長から「日韓が共同してN響を開催できないだろうかと考えているのだが、いかがでしょうか」と相談を受けたので、「それは素晴らしいことです」と応じ、安倍総理にもお願いをして、日韓共同主催による韓国公演を実現させました。

 この公演を鑑賞した際には、私の右隣に韓国の観光大臣、左隣に元内閣総理大臣のご夫妻が座っておられました。演奏の合間合間に色々とお話をしましたが、この興奮ぶり、感激ぶりは一体何なんだろうかと思うほど、大変評判が良かったですよ。

 そこで、韓国公演の勢いに乗って、関係者から今度は中国でもやったらどうかという話になりました。そのためには日本の文科省に当たる中国文化部からバックアップを得る必要がありましたので、5月に3000名の皆さまと一緒に訪中した際、関係者とその部署を訪ねました。その時文化部大臣は海外出張中だったのですが、事務次官がおられました。そこで、私はその場で正式調印まで持ち込み、今回のN響公演の準備を整えました。

(中略)

南シナ海への自衛隊派遣などあってはならない

―― 二階議員が中国を訪問されたのと同じ頃、ソウルでは日中韓3カ国首脳会談と日中首脳会談、ならびに日韓首脳会談が行われました。これらの会談についてどのように評価されていますか。

二階 今回の首脳会談が安倍総理のご努力で実現したことは、これは大変喜ばしいことで、率直に嬉しく思います。また、その間この実現のためにご尽力いただいた人たちの労をねぎらいたいと思います。

 しかし、これは一回きりのものではなく、何度も続けてやらなきゃいけません。日本と中国、韓国はこれほど至近の距離にありながら、「いつ首脳会談をやるのか」、「本当にやれるのか」と、こんなことをお互いに模索するなんてことは下らないことです。極端に言えば、日中韓は一日で回れるところにあるんですから、本当は半年に一回でもやったらいいんですよ。ちょっと肩に力が入り過ぎちゃって、首脳会談開催までに少し時間がかかり過ぎておるんではないかと、私はそう思っています。もし首脳会談が実現できないようなことになってしまえば、今後何が起こるかわからないですよ。そういうことにならないために、しっかりやっていかなければならんと思います。

―― 南シナ海では米中間の緊張が高まっており、まさに「何が起こるかわからない」状況にあります。これに関連して、一部では将来的に南シナ海に自衛隊を派遣するという話も出ています。

二階 これは古くて新しい問題というか、随分前々から、南シナ海の平穏を保つためにはどうすればいいか皆心を砕いておるわけです。しかし、こういうことは慎重の上にも慎重でなければなりません。一触即発という言葉があるが、何かの拍子に思わざる事態が発生しないとも限りません。戦争とか小競り合いが発生する裏には、ちょっとしたことがきっかけになる場合だってあります。それから言うと、すぐ自衛隊を送るなんてことはあり得ないことですよ。あっちゃいけないことです。

 南シナ海の問題を平和的に解決するためには、やはり日中首脳会談などを頻繁に行い、とにかく仲良くやろうよという話をつけなきゃダメです。何かぶっ放せば気持ちいいなんて、そんな時代じゃないでしょ。皆でもっと冷静に落ち着いて考え、お互いの理解を近付けていかなきゃいけないと、そのように思っています。

全文は本誌12月号をご覧ください。