安倍総理は右バネによってはじき飛ばされる
── 昨年末の安倍首相の靖国参拝以来、日米関係が緊張しています。
亀井 日本人を日本人らしく、日本を日本らしくしていこうという安倍総理の志向自体は間違っていません。自信と誇りの持てる日本にすることは重要です。アメリカの言いなりではない、自立した国にしていくこともわが国の課題です。
しかし、右バネが効き過ぎているのではないか。晋三総理は右バネによって総理になりましたが、いまや右バネによってはじき飛ばされそうになっている。
── 「失望」を表明したアメリカに対して「むしろわれわれのほうが失望だ」と批判した動画をネットに流した衛藤晟一首相補佐官のことですか。
亀井 いや、衛藤氏はしっかりしてますよ。しかし、菅義偉官房長官が「政府の見解ではない」と述べて、動画削除を命じると、衛藤氏はすぐに発言を撤回して、動画も削除してしまいました。こんな簡単に自分の発言を取り消すのがおかしいのです。取り消したからといって、日本に対するアメリカの姿勢が変わるわけじゃありません。簡単に発言を撤回すれば、余計バカにされるだけです。同盟国ならば、「失望した」くらいのことは言ったっていいでしょ。それができないような関係は同盟関係と言えないのです。
── 安倍総理の改憲についてはどう見ていますか。
亀井 現行憲法がアメリカから押しつけられたものであることは、間違いない事実です。日本人が自らの魂によって憲法を改正すべきであることは当たり前の話です。
問題は、いま拙速にやる時期なのかということです。いまのように魂を失ってしまった日本人、いかれてしまった日本人、もっと言えば、人間として最低レベルにまで堕ちた日本人が、国家の基本である憲法をいじることには危険性があるということです。もっとおかしな憲法になってしまうかもしれない。
── 安倍総理は、憲法解釈の変更によって集団的自衛権の行使を容認しようとしています。そして、年末に行われる日米防衛協力の指針の見直しにそれを反映させようとしています。
亀井 解釈改憲すべてを否定するつもりはありません。しかし、集団的自衛権の行使は国の根幹に関わる問題です。歴代政府が踏襲してきた解釈を変えるには、相当な条件が整う必要があります。十分な国民的な議論を経て、慎重に進めるべきです。
たまたま、選挙で大勝して過半数をとったからといって、国家の基本政策をそんなに簡単に変えていいのか。右バネが効きすぎてしまっています。自民党は、2009年の総選挙では惨憺たる結果で政権を失ったのです。
── 小選挙区比例代表並立制という変則的な選挙制度のもとでは、ちょっとした票の動きで獲得議席数が大きく変わります。
亀井 政権に復帰したからといって数の横暴に陥ってはいけない。もっと謙虚さを持たなきゃいけない。国政を担う者にはその自覚と責任が要求されるのです。
去年の春頃、私は菅官房長官にも「いま握っている権力も、いずれの日か手放さなければいけない。行使する権力が歴史に棹さすものなのかどうか、きちんと判断すべきだ」と直言しました。
日本独自の国際貢献の在り方を考えよ!
── 憲法96条は改正案を発議して国民投票にかけるには衆参各院で総議員の3分の2以上の賛成が必要と定めています。安倍政権は、この3分の2のハードルを過半数に改めようとしています。
亀井 中身の議論の前に、手続きだけを変えて憲法を改正しやすくするというのは間違っています。
現行憲法の枠の中で、日本に求められている役割を果たす努力もしないで、改憲を急ぐべきではありません。海外で軍事行動をすることだけが国際貢献ではありません。それぞれの国によって貢献の方法が異なるのは当然です。
── 日本がどのような国家として世界の中で生きていくのかという議論が十分に行われていません。
亀井 いま人類は文明の反逆を受けているのです。人間の欲望が肥大化し、物質至上主義、カネ万能主義が極まってしまった。その行きつく先が原発ではないのか。ところがわが国は、福島の原発を制御できていないにもかかわらず、トルコなどに原発を輸出しようとしています。
地球の危機を救うために何ができるか、軍事的貢献だけではなく、総合的な貢献の在り方を考えていく必要があるのです。経済的な分野での国際貢献も重要です。……
以下全文は本誌4月号をご覧ください。