対米従属路線を突き進む安倍政権
日本の対米自立派の中には、トランプ大統領誕生をきっかけとして日本はアメリカから独立すべきだという声があります。確かにそれはその通りです。しかし、アメリカの大統領の力を借りてアメリカから独立しようと考えるのであれば、それは対米自立ではなく対米従属です。
また、安倍首相もかつては「戦後レジームからの脱却」を唱えていましたが、今では「トランプ詣で」を繰り返しています。果たして安倍首相に自立や独立という観点があるのか、疑問に思わざるを得ません。
ここでは、弊誌3月号に掲載した、衆議院議員の亀井静香氏のインタビューを紹介したいと思います。全文は3月号をご覧ください。
トランプ詣はアメリカへの屈従だ!
── 2月10日に安倍総理とトランプ大統領の首脳会談が予定されています。
亀井 いまアメリカにノコノコ出かけて行く必要はどこにもない。「日本に対する要望があるなら、是非日本においで下さい」という姿勢でいいのです。しかも、麻生財務大臣まで連れて行く。そんな形で出かけていっても日本にとって得るものはない。
相手の要望に応えるだけではダメだ。こちらからも要求をつきつけなければ、相手から勝手なことを言われるだけで終わってしまう。
トランプからは、貿易不均衡の是正、非関税障壁について要求されるだろう。自動車分野では、ディーラーの問題や車検の問題などで、様々な要求を突きつけられる恐れがある。農産物でも、もっとアメリカのものを買うよう要求される。それを呑んで帰ってくるのか、蹴飛ばして帰ってくるのか。正念場です。
── しかも、安倍首相は首脳会談の後、フロリダ州に移動し、トランプ大統領とゴルフをすると報じられています。
亀井 「日米首脳は仲がいいのです」と宣伝したところで、どうなるものか。逆にそれはアメリカに屈従するという話だ。ゴルフなどせず、さっさと帰ってくればいいんだ。
トランプ帝政の出現
── トランプ大統領の発言に、世界が振り回されつつあります。
亀井 トランプはそれほど奇異なことを言っているわけじゃないですよ。彼の発言は、人間がエゴイスティックになっている時代に呼応しているのです。彼は人間の本能を抉り出している。
政治とは、人間の営みをどうするかということだ。トランプは、人間の営み、人間の本能そのものにきちんと訴えかけて発言をし、政策を出している。自分の頭の中だけで勝手に考えた政策ではないんですよ。
だから、「大統領に就任したらトランプは変わるだろう」という見方は間違っています。一部の批判を浴びても、彼は自分を支持してくれている人間を頼りに、必要な政策を推進します。
ある意味で彼は天才的なところがある。みんな羞恥心があって、あそこまで露骨にはやれませんよ。とにかく、スピード感がすごい。就任後わずか12日間で18本の大統領令を発した。中東・アフリカ7カ国からの一時入国禁止を命じた大統領令をめぐっては、それに従わなかったイエーツ司法長官代理を即座にクビにしてしまう。
民主主義は最高の政治制度だと言われることがあるが、実はその保証はどこにもないんだ。中学校の教科書に書いてある民主主義は、おとぎの国でしか通用しないのかもしれない。トランプの手法は、ある意味では非常に効率的で、スピードがある。
彼の手法には民主主義を否定している面さえある。そういう意味では、全体主義にも通ずる危険性もある。トランプ帝政のような感じになるかもしれないな。
── ヒトラーもまた、当時世界で最も民主的と言われたワイマール憲法下で実施された選挙によって権力を奪取しました。
亀井 習近平の独裁体制によって台頭してくる中国に対抗するには、それと同じような独裁体制が必要なのかもしれない。相手が即座に決断できるのに、こちらが意思決定に時間がかかっていては太刀打ちできない。議会制民主主義の最大の欠陥は、決定に手間と時間がかかることだ。イギリスもまたエゴを前面に出して、EU離脱を決めた。必然的に、トランプのような指導者が生まれたんだよ。トランプは時代の子なんだろうな。……