台湾選挙と沖縄

 1月16日に投票が行われた台湾の総統選挙は、民進党の蔡英文氏の圧勝に終わりました。今後、台湾と中国の関係は変化していくと思われますが、今回の選挙結果は沖縄問題にも影響を与える可能性があります。

 日本の保守派の多くは中国に批判的であり、そのため中国と近かった台湾の馬英九政権にも批判的でした。彼らの中には「馬英九政権は中国に操られている」、「馬英九政権は中国の手先だ」などと批判する人もいました。

 中国政府が様々な工作を行い、台湾を取り込もうとしたのは間違いないと思います。自国の国益のために近隣諸国を仲間に引き入れるというのは、中国に限らずあらゆる国家が行っていることです。

 今回の選挙についても、中国は多くの工作を行ったはずです。それにも拘らず蔡英文氏が圧勝したということは、中国がいくら工作活動を行おうとも、それには限界があるということです。

 これは沖縄にも言えることです。日本の保守派の中には、翁長雄志沖縄県知事は中国寄りだとして、「沖縄は中国に操られている」、「沖縄は中国の手先だ」などと批判している人がいます。しかし、台湾への工作活動でさえ失敗している中国が、なぜ沖縄への工作活動には成功するのでしょうか。自ら「核心的利益」と呼ぶ台湾でさえ取り込むことができなかった中国が、沖縄を取り込めるとはとても思えません。それ故、翁長知事が普天間基地問題で日本政府と対決しているのは、中国による工作とは無関係だと見なければなりません。

 これに対して、「台湾で中国に取り込まれていたのは政財界だけだ。『良識ある台湾国民』はもともと中国に批判的だった」という反論もあるでしょう。とすれば、沖縄で中国に取り込まれているのは政財界だけであり、「良識ある沖縄県民」は中国に批判的だということになります。

 しかし、沖縄で翁長知事を支持しているのは、まさにその「良識ある沖縄県民」です。「良識ある台湾国民」を取り込むことができなかった中国が、「良識ある沖縄県民」は取り込むことができたと主張するのは、無理があります。

 そもそも翁長知事は決して中国寄りとは言えません。翁長知事は那覇市長時代、朝日新聞のインタビューに応え、「ぼくは非武装中立では、やっていけないと思っている。集団的自衛権だって認める。」と明言しています(2012年11月24日付「朝日新聞」)。日米同盟を容認し、集団的自衛権を認める翁長知事を中国寄りだとするなら、自民党議員のほぼ全員が中国寄りだということになります。

 保守派はいい加減、沖縄が中国に操られていると考えるのは止めるべきです。台湾が自らの意思で民進党を勝利させたように、沖縄は自らの意思で米軍基地に反対しているのです。そのことを認識できなければ、沖縄はますます日本から離れていってしまうでしょう。(YN)