『月刊日本』2021年12月号の紹介

岸田政権よ、どこへ行く

 12月号は20日より書店販売を開始しております。

 今月号では岸田政権の行方を占いました。先の衆議院選挙は自民党の実質的な勝利となり、岸田総理は盤石な政治基盤を手にしました。これにより、岸田政権は安倍晋三氏らにそれほど遠慮せず政権運営に取り組むことができるようになりました。

 政治日程も岸田総理の味方をしています。来年夏の参院選を乗り切れば、しばらく大型国政選挙はありません。コロナの再流行や大型スキャンダルでもない限り、長期政権も視野に入ってきます。

 しかし、政権は長くやればいいというものではありません。第二次安倍内閣は憲政史上最長内閣となりましたが、ダラダラ長いだけで何の成果も残すことができませんでした。

 岸田総理は「新しい資本主義」を掲げ、小泉改革以降の新自由主義的な政策を転換すると述べているが、まだ内実が見えてきません。総理大臣として具体的に何をやろうとしているのか、国民に対して自らの考えをしっかり示すべきです。

 こうした観点から、元自民党幹事長の石破茂氏、立憲民主党の福山哲郎氏、衆議院議員の福島伸享氏、元自民党政調会長の亀井静香氏、元自民党幹事長の山崎拓氏に話を聞きました。

バラマキは財政破綻を招くのか

 衆院選前に矢野康治財務事務次官が『文藝春秋』に寄稿した論文が話題を呼んでいます。矢野氏は自民党が主張する大規模な経済対策や財政収支黒字化の凍結などを批判する一方、野党が主張する消費税率の引き下げにも苦言を呈し、バラマキ合戦のような政策論になっていると断じています。

 矢野論文は従来から財務省が主張してきたことであり、特段目新しさはありません。しかし、現役の財務事務次官が政権与党の政策を表立って批判することはきわめて異例です。麻生太郎前財務相の了解を得ていたそうですが、選挙前にこのような論文を発表すれば、ハレーションを引き起こすことは避けられません。

 第二次安倍政権がアベノミクスを始めて以降、財政出動派と財政均衡派の対立は激しさを増しています。前者の議論は、簡単に言えば、自国通貨建ての国債はデフォルトしないので、政府はいくらでも財政支出できる、というものです。ここからMMT(現代貨幣理論)を唱える人たちも出てきました。後者の議論は、財政赤字を膨らませれば必ず財政破綻するので、財政再建に取り組まなければならない、といったものです。

 両者は互いを厳しく批判していますが、議論は平行線をたどっています。いま岸田内閣は新たな経済対策として現金給付を行おうとしていますが、この政策に関しても財政出動派と財政均衡派の間で対立が見られます。

 国家による財政活動は民主主義に基づかなければなりません。私たち国民はこの問題にもっと関心を持つ必要があります。果たして日本の財政はどうあるべきなのか、「不識塾」塾長の中谷巌氏、産経新聞特別記者の田村秀男氏、元財務大臣の藤井裕久氏に財政政策について議論していただきました。

 その他にも、甘利明幹事長を落選に追い込んだ元東京地検特捜部の郷原信郎氏のインタビューをはじめ、読み応えのある記事が満載です。ご一読いただければ幸いです。