『月刊日本』2022年1月号の紹介

「新しい資本主義」の正体

 2022年1月号は明日22日より書店販売を開始いたします。

 今月号では岸田政権の掲げる「新しい資本主義」について議論しました。岸田総理は「小泉改革以降の新自由主義的な政策を転換する」と述べ、「新しい資本主義」というヴィジョンを打ち出しています。しかし、当初の意気込みはどこに消えてしまったのか、いまではすっかり新自由主義に追従するような姿勢を見せるようになっています。

 たとえば、岸田氏は自民党総裁選に出馬した際には、金融所得課税の見直しに言及し、金持ち優遇政策を転換する意欲を見せていました。しかし、岸田内閣発足前後に株価が続落したからか、「当面は金融所得課税について触ることは考えていない」と述べ、分配政策を大きく後退させました。

 また、岸田総理は小泉改革を主導した竹中平蔵氏や、デービッド・アトキンソン氏が委員を務めた「成長戦略会議」を廃止し、新自由主義者たちと距離をとる姿勢を見せていましたが、結局、岸田総理の肝いりで設置された「デジタル田園都市国家構想実現会議」には竹中氏が参加することになりました。これでは小泉改革と何が違うのか、さっぱりわかりません。

 思えば、第二次安倍政権も「瑞穂の国の資本主義」なるヴィジョンを掲げ、強欲資本主義を批判し、道義を重んじて真の豊かさを追求する市場主義を目指していました。しかし、それが口先だけであったことは、いまでは誰の目にも明らかでしょう。

 私たちは「新しい資本主義」という空虚なキャッチフレーズに振り回されず、岸田政権の本質を見抜く必要があります。

 こうした観点から、『武器としての「資本論」』や『未完のレーニン』の著者である白井聡氏、『人新世の「資本論」』がベストセラーとなっている斎藤幸平氏、『竹中平蔵 市場と権力』や『資本主義と闘った男 宇沢弘文と経済学の世界』の著者である佐々木実氏にインタビューしました。

覇権国家中国とどう向き合うか

 国際社会で中国を非難する声が大きくなっています。アメリカのバイデン政権が中国のウイグル問題などを理由に、来年2月の北京五輪に政府代表を派遣しない「外交ボイコット」を発表すると、オーストラリアやイギリス、カナダもこれに同調しました。

 日本でも反中ナショナリズムが強くなっており、林芳正外務大臣が中国の王毅外務大臣から訪中の要請を受けたことを明らかにしたところ、自民党内から慎重な対応をとるべきだという声があがりました。保守派の一部では、「中国と会談を行おうとするなど、岸田政権は親中派だ」「左翼だ」といった批判までなされています。

 もちろん、現在の中国が多くの問題を抱えていることは事実です。ウイグル問題やチベット問題、香港問題、台湾問題など、挙げていけばキリがありません。つい最近も、中国のテニスプレイヤーである彭帥さんをめぐる問題が起こっています。これらの問題に対する中国の姿勢は、とうてい受け入れられるものではありません。

 とはいえ、中国の外務大臣と会談する姿勢を見せただけで「親中派だ」「左翼だ」などと非難するのは行きすぎです。いくら中国の政策に問題があろうとも、アメリカの国力が低下し、中国が膨張している現在の情勢が直ちに変化することはありません。アメリカに追従するだけでは、日本の安全や経済を守ることができないのは明らかです。私たちは好むと好まざるとにかかわらず、これからも中国と付き合っていかなければなりません。

 それでは、私たちは中国とどのように向き合うべきなのか。東京工業大学教授の中島岳志氏、日本政治外交史が専門で『石橋湛山 思想は人間活動の根本・動力なり』などの著書を持つ増田弘氏、元世界問題研究所所長の東郷和彦氏、評論家の佐高信氏に話をうかがいました。

 また、今月号では、衆議院選挙で議席を伸ばした国民民主党の玉木雄一郎氏、そして立憲民主党の政調会長に就任した小川淳也氏のインタビューも掲載しています。

 その他にも読み応えのある記事が満載です。ご一読いただければ幸いです。