菅野完 籠池逮捕は安倍政権による見せしめだ

森友学園をめぐる新たな事実

 著述家の菅野完氏が発見した音声データにより、近畿財務局の担当者が塚本幼稚園を訪れ、10年間の分割払いの提案などを行っていたことがわかりました。今年2月に当時の佐川宣寿理財局長は「分割払いはこちらから積極的には説明していない」と答弁していましたが、この答弁は事実と異なる可能性があります(8月27日付毎日新聞)。
 
 森友問題は安倍政権にとって致命的な問題です。我々はこの問題の本質をしっかりと理解する必要があります。ここでは弊誌9月号に掲載した、菅野完氏のインタビューを紹介したいと思います。全文は9月号をご覧ください。

森友学園問題の「黒幕」は誰か

―― 森友学園前理事長の籠池泰典氏と妻の諄子氏が大阪地検特捜部に逮捕されました。今回の逮捕をどのように見ていますか。

菅野 これまで森友学園をめぐって問題とされてきたのは、小学校の建築費に関して金額が異なる3つの契約書を提出して補助金を不正に受け取ったとする補助金適正化法違反容疑と、障害を持ったいわゆる特別支援児たち向けの補助金を詐取したとする詐欺容疑の、二つの点です。

 大阪地検特捜部が6月19日に森友学園側に家宅捜索を行ったときには、前者の補助金適正化法違反容疑ということになっていました。また、7月31日に籠池氏が任意出頭したときも、メディアの速報では「検察は補助金適正化法違反容疑で逮捕する方針」とされていました。

 ところが、大阪地検は実際に籠池氏を逮捕した際には、逮捕容疑を詐欺へ切り替えています。これは、特別支援児への補助金を詐取した容疑で逮捕したということではなく、3つの契約書の問題を補助金適正化法違反ではなく詐欺とみなしたということです。

 しかし、元東京地検特捜部検事の郷原信郎氏が指摘しているように、詐欺罪と補助金適正化法違反は一般法と特別法の関係にあります。わざわざ特別法として適用範囲を絞った補助金適正化法があるにもかかわらず、それを無視して詐欺容疑で逮捕するというのは、不自然だと言わざるを得ません。

 おそらく籠池氏を詐欺容疑で逮捕したのは、詐欺の方が補助金適正化法違反よりも刑が重いからでしょう。「籠池を見せしめにしろ」という力が働いたのではないでしょうか。

 しかし、今回の問題を詐欺で立件しようとすれば、検察はジレンマに陥るはずです。というのも、籠池氏はすでに不正に受け取ったとされる補助金を返還しているからです。裁判になれば弁済の事実が重視され、重い刑にならない可能性があります。

 また、籠池氏に詐欺罪を適用すると、籠池逮捕だけで事件を終えることができなくなります。この間、多くの人たちがテレビで何度も籠池という人間を見てきたと思いますが、彼に補助金を騙し取るような知恵があるように見えましたか? 彼にはそんな力はありませんよ。

 籠池氏が受け取った補助金は、建造物を木質化することで得られる「サステナブル建築物等先導事業に対する補助金」というものです。これまでメディアが何度もこの補助金について取り上げてきたため、この補助金の存在は多くの人たちの知るところとなりました。しかし、それ以前にこの補助金のことを知っていたのは建築のプロくらいのものです。

 とすれば、森友学園が補助金を受け取りたいと考えたときに、サステナブル補助金の存在を知っており、どうすればこの補助金を引っ張ってくることができるかというノウハウを有する人間が別にいるということです。

 実際、平成28年1月29日に関係者が集まって行われた現場定例会議の議事録を見ると、「補助金申請のために別見積り及び別契約が必要」と発議しているのは森友学園側ではなく、設計を担当したキアラ建築研究機関の社員だと読み取れる記述になっています。しかも、それに続いて施工を担当した藤原工業の社員が「契約書は藤原工業で保管したい」と申告しているのです。これに対して、同席していた籠池夫人が「コンプライアンスに問題はないのか」と質問したところ、キアラの社員が「問題ないように対応する」と返答しています。

 もちろん最終的に契約書に判子を押したという点では籠池氏にも責任はあります。しかし、誰が補助金詐取の絵を描いたのかということを考えるなら、主犯や従犯という言葉は当てはまらないかもしれませんが、キアラ設計や藤原工業にも話を聞く必要があるはずです。……