「生涯ハケン」に道を開く労働者派遣法の改正案が6月19日に衆議院を通過し、現在参議院で審議されている。また、政府の規制改革会議は労働者の首切り自由化を推進しようとしている。
労働者を守るためのルールが、大企業と一部の新自由主義者の意向によって改悪されようとしているのだ。新自由主義的政策に基づいた規制改革の旗振り役が、産業競争力会議民間議員と国家戦略特区諮問会議民間議員を務める竹中平蔵氏である。問題は、竹中氏が、労働規制の緩和や民間委託によって大きな利益を得る人材派遣会社パソナの会長を務めていることだ。利益誘導と批判されても仕方がない。
2013年3月15日に開催された「第4回産業競争力会議」で竹中氏は、「雇用調整助成金を大幅に縮小して、労働移動に助成金を出すことは大変重要。是非大規模にやって欲しい」と語っている。この発言に沿う形で、労働移動支援助成金は、2013年度に前年度の2億円から一気に300億円に増えた。この巨額の予算は、転職サービスを行っているパソナなどの業者に流れ込んだ。
2014年には、ASKA(宮崎重明)が覚醒剤取締法違反容疑で逮捕されたことから、パソナが接待施設「仁風林」で政治家や官僚を接待していたことが明らかになった。その中にはパソナを管轄する立場にある田村憲久厚労相まで含まれていた。
ところが、パソナ、竹中平蔵氏への「利益誘導」疑惑について、大手新聞やテレビは一切報道しなかった。
こうした中で、「國の子評論社」を主宰する横山孝平氏は、2014年6月からパソナ本社前などで抗議の街宣活動を行った。横山氏は、次のように語っている。
「公的な立場の竹中平蔵と自身が会長を務める民間人材派遣会社の癒着関係を多くの国民に知らしめるためのものだ。この問題が、国会の厚生労働委員会などで取り上げられながら、ほとんど報道されないことに疑問を感じていた。これが『仁風林接待』の効果であるならば、なおさらのことである」
街宣活動自体は、「表現の自由」「言論の自由」で保障されているはずである。ところが、同年8月25日、パソナ、竹中平蔵氏らは、横山氏に対して「街宣活動禁止仮処分命令」を東京地方裁判所に申し立てた。
大手町にあるパソナ本社や新宿支社、渋谷支社、さらに中央区佃にある竹中氏のマンションの「半径500メートル以内を徘徊し、大声を張り上げ、街頭宣伝車や拡声器等による宣伝、演説、放送、ビラの配布」をして、パソナグループ、パソナの事業活動と竹中氏の「平穏な生活」を「妨害する一切の行為をしてはならない」との処分である。わずか2日後の8月27日、東京司法裁判所は仮処分を決定した。
実は、パソナ側が申し立てをした3日後(8月28日)には、パソナグループの株主総会が、その2週間後には、ASKA覚醒剤事件の判決が言い渡されることになっていた。パソナ側にとっては、騒がれたくない事情があったのだ。
横山氏は「わかりやすい言論妨害行為だと思った。しかも彼らは、仮処分決定から7ヶ月を過ぎても本訴を提起しなかった。これは明らかな仮処分の濫用である」と語っている。
そこで横山氏は、東京地方裁判所に対して「起訴命令申立書」を提出、7月10日に第一回口頭弁論が行われた。
横山氏はまず、訴状にいう「誹謗中傷と、業務に損害を与えた」というその内容を明らかにすることを求めた。今後の公判では、パソナと竹中平蔵氏に対する横山氏の批判が誹謗中傷や名誉棄損に当たるかが争われる。
横山氏も、「竹中新自由主義・利益誘導・ハケンこそ永久就職」といった言葉が、法廷の公記録に残る意味の大きさを意識している。……