石破茂 私は言うべきことを言う

国民をなめて選挙をすれば、必ず厳しい審判を受ける

 石破茂議員は先日、愛知県で行った街頭演説で「自民党は最近おごっているのではないか、いい気になっているのではないか、国民をなめているのではないか、そのような自民党であってはならない。国民をなめて選挙をすれば、必ず厳しい審判を受ける」と発言しています(9月22日付朝日新聞)。果たして昨日の安倍首相の解散表明を国民はどう受け止めたのか、注目されるところです。

 ここでは、弊誌10月号に掲載した、石破議員のインタビューを紹介したいと思います。全文は10月号をご覧ください。

忠誠を誓うべきは国民だ

―― 自民党は「一強」だと言われますが、安倍総理は自民党内でも「一強」だと思います。その結果、自民党では闊達な党内議論が全くなく、言論の自由が失われています。

石破 それは安倍総理の責任ということではなく、自民党議員一人ひとりがインディペンデントであるか、ということだと思います。小選挙区制の弊害はよく言われるところですが、「小選挙区制の下で総理総裁にものを言ったら選挙で勝てない、資金がもらえない、ポストがもらえない……」というような考え方があるのでしょうか。それ以外の理由は思いつきません。

 またメディアの中には、安倍総理への批判に感情的に反応するようなものも見受けられます。それを見てひるんでしまい、党や官邸に意見することを控えてしまう人もいるかもしれません。

 しかし、国会議員が忠誠を誓うべきは主権者国民であって、党や官邸ではない。この原理原則を忘れてはなりません。仮にこれを忘れて言うべきことを言わないのならば、政治家でいる意味はなんなのでしょう。

 以前、自民党は「自分党」と揶揄されたことがありますが、そうなっていないかどうか、日頃から反省しなければならないと思います。

―― 「一強」に驕った安倍自民党は、都議選で自民党の議席を57から23まで減らし、惨敗しました。

石破 かつて自民党は二度下野しました。麻生政権のときは、導入した「後期高齢者医療制度」が、「後期高齢者」という名称から反発をうけてしまった。我々にはそんなつもりは全くなかったけれど、侮辱と受け取った国民の方々がいらっしゃった。そして自民党は2009年の総選挙で、政権を失いました。政策が間違っていなくても、政治家としての在り方が間違っていれば、国民の信頼は失われるのだと思います。

 小選挙区制度の下では、国民の審判がかなりクリアな形で下される。だからこそ野党を侮ってはならないし、常日頃から立ち居振る舞いを慎まなければならない。我々自民党はそのことを身を以て経験しました。

 現在は自民党議員のうち、約4割が1~2回生議員です。つまり、半数近い議員が野党時代を知らないのです。しかし1~2回生議員こそ、党や官邸にものを言うべきです。彼らはいちばん頻繁に選挙区に帰り、いちばん国民に近いところにいるのですから。

 私も新人議員のころは、週に4回は地元に帰っていました。夜行列車で朝7時に鳥取に帰って、街頭演説や企業回りをしてから、9時の飛行機で東京に戻ってくる。夜9時に鳥取に戻って、夜12時の夜行バス、あるいは翌朝の始発の新幹線で東京に帰ってくる。たとえ2~3時間しかいられないとしても、地元には頻繁に帰っていました。

 そうして選挙の力をつければ、変に党の顔色を窺う必要もなくなるでしょう。実際、いま党や官邸にものを言っているのは、平沢勝栄さん、村上誠一郎さん、後藤田正純さんなど、みんな選挙に強い人たちです。自民党を強くするためには、一人ひとりの議員が強くなることです。……