高橋浩祐 米国のATMと化す日本

(前略)

アメリカのATM化する日本

 日本が先進国最悪の財政難にあえいでいるにもかかわらず、今回の2プラス2の共同声明では、グアム移転費や普天間飛行場補修費、さらには、北マリアナ諸島の訓練施設の共同整備費用など、日本に対する米国の請求書がコンスタントに増額されてきている。

 まず、経費面を見てみたい。米国側の発表と食い違い、日本の外務省が国内向けに負担額をなるべく少なく見せるよう発表しているフシがある。

 在沖縄海兵隊のグアム移転の日米双方が負担する合計額は、2006年合意の102・7億ドルから、今回の中間発表では86億ドルに減額された。

 しかし、日本の現金払いによる直接的な財政負担は、2006年のロードマップや2009年のグアム協定で合意された上限28億ドルから、物価上昇分を加味して31億ドルに引き上げられた。

 アメリカの国務省と国防総省がワシントンにいる記者を対象に行ったバックグランド・ブリーフィングでは、米政府高官が日本側負担が31億ドルになったことを何度も強調している。一方、これを知ってか知らずか、外務省発表の「日米安全保障協議委員会(「2プラス2」)共同発表のポイント」では、従来の28億ドルを限度に合意されたことが記されているだけ。31億ドルについては一言も記されていない。

 31億ドル-28億ドル=3億ドルは決して少なくはない額だ。米国内の物価上昇分や為替レートを加味し、実際の負担が31億ドルになったならば、どうして外務省は31億ドルと発表しないのだろうか。

 そもそも、海兵隊のグアム移転や、テニアン島とパガン島の訓練場整備費のために、日本が31億ドル=2500億円を真水のキャッシュの現金払いで、ポンと支払う財政的な余裕があるのだろうか。日本がこれだけの額を負担するのに、日本国民全体の理解が十分に得られているだろうか。

 日本国内での米軍施設の建設費用ならまだしも、グアムやテニアン島など、米国領土に建設する米軍施設に、何千億円もの経費を負担することに本当に日本国民のコンセンサスが得られているのか。なぜ日本が海外の訓練場や隊員宿舎、学校といった建設費用を日本の国民の税金で負担せねばならないのか。

 日本国民がよく分からないままに、政治力や外交力が弱い日本がアメリカの負担をずるずると肩代わりしていっていないだろうか。

 どうも国民の十分な理解が得られないまま、負担面を含めた、交渉がどんどんと進められていっている感じがしている。

 実はこうした米国に対する日本のATM化、キャッシュベンダー化は、自民党時代からずっと続いてきたもので、国会でも与野党双方が議論を避けているフシがある。

 表立って強調されていないが、米国の在外米軍再編の基本方針の一つに、外国の基地や施設は、建設費、維持費を可能な限りその国に負担させる、との暗黙の了解が存在する。財政難にあえぐ米国は、この方針をさらに進化させて、日本国外の基地や施設の費用までをも日本に負担させ、日本もそれをのむようになってきている。日本は、まるで米国の「打ち出の小槌」のようになってきている。

 米国には、レビン、マケイン、ウェッブという、口のうるさい3人の有力上院議員がいて、納税者としての米国民の財政負担を心配し、常に国務省や国防総省を監視しチェックしているが、日本にはそんな国会議員が見当たらない。

 日本の大手新聞社やテレビも、記者クラブに常駐し、現行計画推進の当局のスタンスに染まっているから、こうした基本的な疑問を紙面で書くことを忘れがちだ。当局の発表に躍らされていて、納税者の視点からの報道に欠けている。……

全文は本誌6月号をご覧ください。