二階俊博 われ「媚中派」と呼ばれようとも 

(前略)

たとえ「媚中派」と言われようとも

―― 二階議員は中国で習近平国家主席と会談されました。一部では事前の予想として、習主席は会談に応じないのではないかとも言われていました。

二階 私は3月に海南島で開催された、福田康夫元総理が理事長をしているボアオ・アジア・フォーラムにお招きいただき、パネラーとして医療問題や健康問題について発言しました。その時習近平国家主席もお出でになっておられたので、私は「今度、日中友好を熱心に進めている3千人の同志たちと一緒に訪中することになっている。これは人と人との交流、特に民間の人たちの交流だ。習主席にも協力してもらいたい」と言いました。習主席からは「日中間の人民の相互交流は大変大事なことなので協力します」と、明快なお答えをいただきました。

 そのため、私は5月の訪中時には必ず習主席にお会いできるだろうと確信していました。しかし、これは誰にも言いませんでした。今回3千人の方々にご一緒していただきましたが、「習近平さんがお出でになるからご一緒しませんか」という呼びかけは一切しませんでした。

 それは、あれだけの国のトップリーダーですから、国際的な問題も含めて何か起これば来られなくなることだってあるからです。また、「主席がおいでになるから来たらどうだ」というような、看板で人集めをするようなことはすべきではないと思っているからです。私は過去5回訪中しましたが、一度もそうしたことはしておりません。

 少し気の早い人は、習近平国家主席が出て来ないなら行っても仕方がないということで、訪中の参加申し入れはあったものの実際には来なかった人もいたようです。3千人もお見えになるわけですから、色んな目的や考えを持った方がいます。それについて気にする必要はないと思っていますし、我々の方から特に意見を述べることもありませんでした。

―― 最近、日本では排外主義的言説が強くなっており、二階議員を「媚中派」と揶揄する声もあります。

二階 そんなことは過去に何回か言われておりますから気にもしていませんが、「そんな偉そうなことを言うなら自分で行ってらっしゃいよ」と申し上げたい。

 我々は誰の力も頼っていません。3千人の人たちと一緒に訪中するといっても、政府に協力を求めたわけではありません。また、皆一人一人が自分の旅費をご自身で負担いただいています。なぜそうするかと言うと、誰かの力を借りてやると正しい結果は出ない、真実の味は出て来ないからです。

 ですから、媚中派と言われようが何と言われようが、そんなことはなんでもありません。「言っているあなたが恥ずかしいでしょ」と言ってあげたいくらいです。

世界平和を願い、写経を奉納した岸元総理

―― 現在、日中関係はギクシャクしていますが、長い歴史の中で日本は中国から大きな影響を受けてきました。

二階 それは紛れもない事実です。我々は皆このことを大切にし、お互いに感謝し、貴重なこととして後世に伝えていく責任があります。

 今年、高野山は弘法大師・空海が道場を建設してから1200年を迎えました。空海が仏教を学ばれたのも中国です。開創1200年の行事には外国からも多くの方が見えていますが、中国の皆さんにも空海の業績をもっとわかってもらえるようにしなければいけないなというふうに思っています。

 高野山には安倍総理にも来ていただきました。総理の祖父である岸信介元総理は政界を引退された後、写経を始められて、高野山に1150巻も奉納されています。

 その中に「願意 世界平和」という文字をしたためた写経がありました。私が「これを一枚いただけないか」と相談したところ、高野山から「岸家のご了解をとっていただければ」と言われました。すると、隣におられた総理が「どうぞ、どうぞ」と勿論ご許可をくださり、総理と私がそれぞれ一枚ずつもらうことになりました。

 私は中国でもこの「世界平和」という言葉に出会いました。私は中国の名門高校である大連第十六高校を訪問し、私の母校である日高高校と姉妹校提携を結びました。後日、第十六高校の校長先生が日高高校に立派な額装をした書を送ってくれました。その中に「世界平和」という文字があったのです。時代を越え、国を越え、皆が世界平和を願っているのです。ですから、このことに背を向けるような行動は何人と雖も許されない。我々はこの点をしっかり心に銘記して政治に携わっていかなければなりません。……

全文は本誌8月号をご覧ください。