亀井静香 日米安保条約を根本的に見直せ

まず考えるべきことは「自国の安全をどう守るか」だ

── 安倍総理は、安全保障関連法案成立を強行しようとしています。法案の衆院可決後、参院で60日経っても採決されないとしても、衆院で3分の2以上の賛成で再議決できるように、会期を95日間も延長しました。強引な国会運営です。

亀井 安倍総理は遮二無二法案を成立させようとしている。物事を決める手順なんて、もうどうでもいいという感じだ。

 彼は「国際環境が変わったのだから、憲法解釈も変えないといけない」というような言い方をしているが、そうであるならば、まず日米安保条約を再検討しなければいけないはずだ。

 極東の政治状況、軍事状況がこれほど大きく変わっているときに、現在の日米安保条約で日本を守っていけるのか。それを根本的に考えなければならない。岸信介首相が旧安保条約を改定してから、もう55年も経っている。この間、環境は激変しているのだ。国家の安全を脅かす新たな脅威、特にサイバーテロといった脅威に対して、本当に日本を守ろうとするのであれば、「安保条約自体を根本的に見直そう」とアメリカに提案すべきなのだ。それもやらないでおいて、自衛隊が外国にまででかけていって、アメリカを助けることで日本の抑止力が強化されるなどと主張している。

 外国からの日本に対する攻撃から、日本を守ることができるのか。政府の発想は時代錯誤だ。まるで、「ヤァヤァ我こそは~」と名乗りをあげていた戦国時代の発想だ。いまはそんな時代じゃない。一瞬にしてミサイルが飛んでくる時代だ。サイバーテロなどは、電波で相手を破壊してしまう。いまわが国は、想像できないような危険な状態に置かれているのだ。こうした新しい状況の中で、日本がいかにして自国の安全を確保するかが最優先のはずだ。果たしていまの日米安保だけで十分なのかを再検討しなければいけないはずだ。

 ところが、安倍政権は見当違いの方向に進もうとしている。集団的自衛権を行使できるようにしたところで、日本の安全保障の強化にはならない。集団的自衛権によって、サイバーテロに対する脅威が軽減できるのか。ミサイル攻撃に対する防衛力が高まるのか。

── 戦争の性格、性質が大きく変わってきているということを認識しつつ、日本の安全保障を強化するためにどうすればいいか、まず自民党内で自由闊達な議論をやるべきだということですね。ところが安倍首相は4月の訪米で日米防衛協力の指針(ガイドライン)改定に合意し、上下両院合同会議の演説で、「安保法制を夏までに成就させる」と、勝手に約束してきました。

亀井 現在の日米安保条約を改定するという議論が、どうして自民党の中から出て来ないのだ。いかに自民党がイカレているかということだ。そういう基本的な議論をしないで、集団的自衛権を優先するというのは、まるで順序が違う。

安保関連法案成立後、政権は持たなくなる

── このままでは安保関連法案は成立してしまいます。

亀井 野党が徹底的に抵抗することができれば、安保法案の成立を食い止めることはできる。しかし、いまの民主党に腹を据えて抵抗できるかは疑問だ。

 国民もマスコミも、いったん決まってしまえば、「もう終わっちゃった」と黙り込んでしまう。政府はそれを見越して強引に進めている。

 野党もマスコミも完全に馬鹿にされているのだ。しかし、政府が国民の意志に反することをやったら、次に国民の審判を受けることになる。強権政治ならば、選挙を実施せず、国民による審判の機会さえ奪い取ることができる。世界を見れば、そういう強権政治を行っている国はある。しかし、いまの安倍政権や自民党にそこまでやる力はない。いずれ、国民からしっぺ返しを受けることになるのだ。……

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