森友問題の核心は何か

なぜ約8億円の値引きが行われたのか

 会計検査院が森友学園への国有地売却問題について、約8億円の値引きの根拠となったごみ撤去費は「十分な根拠が確認できない」とする報告書を国会に提出しました。これは森友問題をめぐる大きな問題の一つであり、なぜこのような値引きが行われたのかを徹底的に追及しなければなりません。

 ここでは、弊誌10月号に掲載した、著述家の菅野完氏の論文を紹介したいと思います。全文は10月号をご覧ください。

森友学園事件が大問題に発展した理由

 学校法人森友学園が建設をすすめる「瑞穂の国記念小学院」敷地予定地の国有地取引に関する第一報が朝日新聞によって報じられたのは、今年2月9日。あれから7ヶ月が経つ。この間、所謂「森友学園事件」は、国会質疑、森友学園理事長(当時)・籠池泰典氏の国会証人喚問、さらには籠池夫妻の逮捕と、急激な転変を遂げてきた。

 しかしながら、この間、次から次へと明らかになる新事実、そしてなによりも籠池夫妻の強烈なキャラクターもあいまって、「一体、森友学園事件は何が問題とされているのか?」が曖昧なまま事態が進展してきたのも事実ではある。

 そこで、本稿ではこの「あまりにも多岐にわたる森友学園事件の問題点」を一旦、網羅的に全て書き出すことで、安倍政権支持率低下の要因ともなった本件を、俯瞰的に振り返ることに主な力点を置くことにする。森友事件が「安倍政権下の日本の歪み」を物語る事件であることが明らかになるはずだ。

 感情的な議論を排するためにも、まず最初に「森友事件とは疑獄事件としては極めて小規模かつ瑣末な事件である」という点を押さえて置く必要がある。

 確かに国会を大いに揺るがしもした、その結果、安倍政権の支持率を下げもした。だが、懸案の国有地売却の疑惑とは「不動産評価額9億5600万円の国有地が8億2000万円値下げされ、わずか1億3400万で売却された」という代物に過ぎない。差額はわずか8億円強。昭和の昔の疑獄事件とくらべれば、額が小さすぎる。いや桁が一桁少ないと言ってもいいだろう。

 しかも舞台は大阪府豊中市。あくまでも地方都市の、しかも決して交通至便とはいえぬ僻地でおこなわれた土地取引だ。この国有地取引に関する疑惑そのものが「大ネタ」であるとはとてもではないが言い難い。

 だが事案の小ささにも関わらず、森友学園事件は朝野を揺るがす大事件に発展した。とても大事件とは言い難い事案がここまで大きな問題に発展したのだ。この不自然さは「誰かがこの話題を必要以上に大きなものにした」とするしか説明がつかない。では一体誰がこの問題をここまで大きくしたのか?

 政権周辺および与党側は2月以降、官房長官記者会見など、様々なチャネルを通じて「この問題を大きくしたのは、政策議論に集中しない野党と、瑣末なことを書き立てるメディアのせいだ」と事あるごとに主張してきた。しかしこれは責任転嫁としか言いようがない。瑣末なことであるならば瑣末なことであるときっちりと国会で説明をすれば済む。だが政府与党側はその説明から逃げつづけ、曖昧な答弁に終始している。国有地処理の責任部局である財務省理財局の佐川局長(当時)の答弁はもはや全てが嘘であったことが立証されてしまっている。

 ここまで政府が嘘に嘘を重ね、答弁を曖昧に濁すしかない立場に追い込まれたのは、ひとえに、安倍首相が、疑惑発覚後わずか8日目の2月17日の予算委員会で、「私や妻が、この、認可、あるいはこの国有地払下げに、もちろん事務所も含めて、一切、これはかかわっていないことは、明確にさせて頂きたいと思います。もし関わっていたんであれば、これはもう、私は総理大臣を辞めるということでありますから、それをハッキリと申し上げたい」と答弁したからに他ならない。この答弁で安倍自身が「総理大臣を辞める」などと口走ったがために、森友学園事件は、一気に政局マターとなったのだ。……