『月刊日本』2021年5月号の紹介

主権を失った日本

 弊誌5月号は明日22日より書店販売を開始いたします。

 今月号では「主権を失った日本」という特集を組みました。現行憲法では「主権」は国民にあると定められています。日本政治のあり方を決定するのは日本国民であって、他の誰かに強制されてはならない。これが国民主権の基本的な考え方です。

 それでは、現在の日本国民は主権を行使していると言えるでしょうか。新聞各紙の世論調査を見ると、国民の間では菅義偉政権の新型コロナウイルス対策への不満が強まっています。コロナの感染者数の増加と反比例するかのように、菅政権の支持率は下落しています。

 しかし、選挙に行って政治を変えようとする国民は決して多くありません。選挙の投票率は低迷を続けており、「選挙に行っても何も変わらない」が決まり文句のようになってしまっています。

 同じように、国際政治において日本は主権国家とされています。日本のことは日本が自ら決めるのであって、外国から強制されてはならない。それが主権国家というものです。

 しかし、戦後の日本は一貫してアメリカの強い影響下に置かれ、アメリカの意思によって外交や安全保障政策を左右されてきました。かつてカーター政権で大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を務めたブレジンスキーは、日本はアメリカの「保護国」だと言い放ちましたが、残念ながらそう言われても仕方ない現実が存在します。

 先日の日米首脳会談を受けて発表された共同声明では、約半世紀ぶりに台湾への言及が盛り込まれました。アメリカの強い要求に、日本が追従した形です。果たしてこれで主権国家と言えるのでしょうか。

 こうした問題をめぐって、思想家の内田樹氏、政治学者の白井聡氏、元内閣官房副長官補の柳澤協二氏、自民党衆議院議員の古川禎久氏、評論家の田原総一朗氏にお話をうかがいました。

東京五輪 今こそ「勇気ある撤退」を!

 いま菅政権は東京五輪開催を強行しようとしています。しかし、コロナ禍の中での五輪開催は無謀と言わざるを得ません。

 コロナの感染者が再び増加傾向にある一方で、日本の検査数、ワクチン接種率は先進国で最低水準です。そのため、東京五輪が世界中にコロナをまき散らすリスクもあります。

 菅政権がなすべきことは東京五輪の強行ではなく、「勇気ある撤退」です。自民党の二階俊博幹事長が、誰もが無理だという状況がくれば「スパッと止めるのは当然」と述べたことで、五輪中止はあり得ない選択肢ではなくなりました。

 本誌は2015年9月号から一貫して五輪返上を訴えてきました。今月号では元スイス大使の村田光平氏に、改めて五輪問題をうかがいました。

 また、5月号では自民党衆議院議員の稲田朋美氏とジャーナリストの青木理氏に対談していただきました。稲田氏は神道政治連盟や日本会議などと近い関係にありましたが、LGBTやジェンダーの問題に関して積極的に発言するようになった結果、神道政治連盟国会議員懇談会の事務局長を更迭され、日本会議とも距離ができています。
 
 なぜ稲田氏は立場を変えたのか、夫婦の性はどうあるべきか、両氏に徹底討論していただきました。

 さらに、今月号では『宗教問題』編集長の小川寛大氏に、現在のミャンマー情勢についてうかがいました。小川氏は『宗教問題』でミャンマー特集号を発行し、ミャンマーで軍幹部などへの取材を行っています。

 小川氏は今回のクーデターには、欧米がアウンサンスーチー氏を批判し、スーチー氏の権威が失墜していたため、軍部がその隙をついたという側面もあると指摘しています。

 その他にも読み応えのある記事が満載です。ご一読いただければ幸いです。