産経新聞に報道機関を名乗る資格はない

沖縄の未来にとってきわめて重要な知事選

 本日は沖縄県知事選挙の投開票日です。沖縄の未来にとってきわめて重要な選挙です。もちろんこの結果は沖縄だけでなく、日本全体にも影響を与えます。日本の中には沖縄に対する差別感情が明確に存在します。それは産経新聞などの報道姿勢を見れば明らかです。我々はこの選挙をきっかけに、日本と沖縄の関係を改めて見直すべきです。

 ここでは、作家の適菜収氏と哲学者の山崎行太郎氏の対談本『エセ保守が日本を滅ぼす』(K&Kプレス)の一部を抜粋して紹介したいと思います。

商売としての沖縄差別

山崎 しかし、安倍政権を支持するようになってから、産経新聞の質は極端に劣化してしまったように思います。最近の報道は本当に酷いですからね。

 たとえば、産経新聞は2017年12月に沖縄の米海兵隊曹長が人身事故にあったことを取り上げ、この曹長は日本人を救出しようとして事故にあったにもかかわらず、琉球新報と沖縄タイムスの二紙がこのことを報道していないとして、「これからも無視を続けるようなら、メディア、報道機関を名乗る資格はない。日本人として恥だ」と厳しく批判しました。

 ところが、沖縄二紙が米軍と沖縄県警に確認したところ、両者ともそのような事実は確認できていないと答えたそうです。つまり、産経新聞はろくに取材もせずに捏造記事を書いたということです。

 実際、産経新聞はその後、記事を訂正し、謝罪文を掲載しています。果たして報道機関を名乗る資格がないのはどちらかということです。

 昨年12月12日付朝刊3面「日本人救った米兵 沖縄2紙は黙殺」の記事中にある「日本人を救出した」は確認できませんでした。現在、米海兵隊は「目撃者によると、事故に巻き込まれた人のために何ができるか確認しようとして車にはねられた。実際に救出活動を行ったかは確認できなかった」と説明しています。
 
 同記事は取材が不十分であり、12月9日にインターネットで配信した産経ニュース「危険顧みず日本人救出し意識不明の米海兵隊員 元米軍属判決の陰で勇敢な行動スルー」とともに削除します。記事中、琉球新報、沖縄タイムスの報道姿勢に対する批判に行き過ぎた表現がありました。両社と読者の皆さまにおわびします。(2018年2月8日「産経新聞」)

適菜 産経の見出し風に言えば「大ブーメラン」ですね。産経は朝日新聞の慰安婦報道などをめぐって、朝日は捏造体質だとさんざん批判してきました。しかし、いまや産経自身が捏造体質になっています。

 この記事に限らず、産経の沖縄に関する報道は非常に歪んでいます。沖縄の人たちは同じ日本国民、同胞であるにもかかわらず、米軍を批判する沖縄メディアや沖縄の人々に対し、「反日」のレッテルを貼っている。

 その背景について考えてみたんですが、産経はネトウヨ、あるいはネトウヨレベルの読者をターゲットにしたビジネスに軸を移したのだと思います。今の日本社会にはネトウヨが溢れていますよね。普天間基地の近くの小学校に米軍のヘリの窓が落下する事件が起こったときには、学校側に「どうせやらせだろ」とか「基地の近くに小学校があるのが悪い」といった電話が何本もかかってきたそうです。下手をすれば子供が死んでいたかもしれないのに、米軍ではなく学校側に苦情を入れているんです。

 ネトウヨは単に日々の鬱憤やルサンチマンを弱者にぶつけているだけです。産経はそういう人間に向けて記事を書くようになって劣化したんですよ。

山崎 最近はネト右翼をターゲットにした書籍が一定数売れているから、ネトウヨ向けの記事を書けば、新聞も売れるかもしれないと考えているんでしょうね。完全に商売です。

適菜 産経も最初は商売のために意識的にネトウヨ受けする記事を書いていたのでしょうが、いまやネトウヨレベルの記者が与太記事を書くようになった。産経の見出しを見るとわかるのですが、ネトウヨのブログとそう変わらないんですよ。「森友学園問題でも民進党ブーメラン」とか「韓国最大野党幹部、安倍首相の正論を認めず」といったものもありました。

山崎 普通だったら恥ずかしくて使えないような言葉でも、平気で使ってしまっていますね。客観的に見ればネトウヨの世界でしか通用しない言葉なのですが、一般社会でも通用すると思っているんでしょうね。

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