平野貞夫 利権化した政治を糺す

政治の利権化が止まらない

―― 現在の政治状況をどう見ているか。

平野 政治家は国民の代表としての役割を果たすことを放棄し、官僚は露骨に利権を拡大しつつある。国会が全く機能しなくなっている現在の状況は、明治以来最悪のものだと言ってもいい。日本の議会政治は発足して120年で崩壊した。

 この遠因は、自民党・森政権にまで遡ることができる。森政権は、森総理を含む五人の自民党議員の談合によって誕生したものだが、談合で総理を決めるなどというのは議会民主政治を冒瀆する振る舞いだ。

 また、続く小泉政権では市場原理主義が国の中心に据えられ、自由競争という名の下に利権の拡大が図られた。このようにして政治の利権化が急速に進んでいき、政治家の質も低下していった。

 国民はこうした自民党の談合政治を嫌悪し、その変革を望んだ。それが、民主党による政権交代へと繋がったのだ。ところが、菅政権や野田政権はその期待を踏みにじった。彼らは自民党時代の談合政治を復活させ、さらにそれを強化した。そして、それに抵抗する正当な政治勢力を排除するようになった。

 「小沢事件」もそうした談合政治によってもたらされたものだ。小沢氏は検察審査会によって強制起訴されたが、菅政権の有力閣僚が第五検察審査会の補助弁護人の選定に関わり、強制起訴の伏線を敷いたとの情報もある。政治権力と司法権力による談合が行われたのだ。

 また、東日本大震災によるガレキ処理においても談合政治が横行している。政府の発表によれば、被災地のガレキの推計量は2250万トンとされているが、実際の総量は一千数百万トンほどだと言われている。これは地元の自治体も認めている事実だ。

 しかし、実際の総量を公表すると、ガレキ処理のための予算が半減させられ、その予算に群がる業者や政治家たちの取り分が減ってしまうため、それはひた隠しにされている。このようにして、予算だけ食いつぶし、復興が全く進まないという状況が生まれてしまった。

国民を放射能の危険にさらす既得権益

平野 原発問題に関しては、さらに深刻な事態が生じつつある。福島原発の影響により、首都圏においても放射線量が高いホット・スポットができた。そこでは、一般の家庭ゴミなど廃棄物を効率的な焼却炉で処理すると、放射能が10万ベクレル級に濃縮された焼却灰が発生する。

 焼却灰は通常であれば埋め立て処理されるのだが、国の基準を上回る値が検出された場合はそうするわけにもいかない。そのため、ドラム缶などにいれて保管されている。首都圏の某地域では、汚染された焼却灰を石灰などで一次処理し、保管している施設周辺の地面から1・5マイクロシーベルト、地上1mの空間から0・29マイクロシーベルトの放射線が専門家によって測定された。早急に第三者による正確な実施調査を行うべきだ。ことは国民の生命にかかわることだ。

 風向きにより数値が変化しているため、専門家の話によれば、保管されている焼却灰が核反応を起こしている可能性もあるという。最悪の場合、かつて東海村で起こったバケツ臨界事故のような事態をも引き起こしかねないとの警告を受けている。

 このような事態にも関わらず、政府や自治体の動きは鈍い。それは、放射能の除染作業までも利権と化してしまっているからだ。

 現在の除染作業は、水で流したり、コンクリートで固めて他の場所に持っていったりといった方法で行われている。しかし、これは放射能を縮減することにはならない。新たな放射能廃棄物をつくり出しているだけだ。

 板橋区ホタル生態環境館の阿部宣男氏の研究によれば、「ナノ純銀粒子」によって放射性物質を減衰することができる。昨年暮れから数回にわたり実証実験を重ね、千葉県某所では約10万ベクレルの土壌が1カ月で4900ベクレルに減衰した。科学者の中には物理学の通説を修正するものと注目している人たちもいる。

 その材料は食品添加物にも使われている無害のものであり、早急に放射能対策として活用するとともに、メカニズムを解明して研究すれば、福島第一原発の根本解決に役立つものと一部の科学者から期待されている。

 このような効果が実証されているにも関わらず、自己の名誉と利権を奪われたくない科学者や官僚、企業が、新たな可能性のある研究を排除しようとしている。日本原子力研究開発機構に持ち込んだが、扱いに困っていると聞いている。

 二次災害というさらなる悲劇を回避するためにも、一刻も早く現在行われている放射能対策を抜本的に見直すことが必要だ。……

以下全文は本誌5月号をご覧ください。