植草一秀 原発・消費税・オスプレイが総選挙争点だ

政治の劣化が日本弱体化の元凶

 政権の正統性というものは民意、すなわち主権者である国民の意思によって支えられるものである。このことを端的に示しているのは、日本国憲法前文の次のくだりだ。「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、(中略)主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する」

 そして、主権者である国民の意思を表明する最重要の機会が国政選挙である。国政選挙を通じて主権者国民が代表者を通じて行動するためには、選挙と選挙後の議員の行動に一定のルールを設定することが重要になる。そのルールの中核として近年叫ばれてきたものが「マニフェスト」である。

 野田佳彦氏が言う「書いてあることは命懸けで実行し、書いてないことはやらない、それがルール」であり、「書いてあることは何にもやらないで書いてないことはやる。それはマニフェストを語る資格がない」のである。

 その野田佳彦氏が「シロアリを退治しないで消費税を上げるのはおかしい」と宣言しながらいま、「シロアリを退治しないで消費税を引き上げ」ようと暴走を続けている。

 主権者国民は野田氏を日本の首相だと一度も認めていない。野田氏は主権者国民の信を問うたことがない。選挙の際の公約を踏みにじり、野田氏は消費増税法案を国会に提出した。野党の自民、公明両党は、公約違反の消費増税法案を国会にかけるのはおかしいと言いながら採決に応じた。おかしいと思うなら、採決の前に民意を問えと主張すべきだった。

 自公が採決に応じて法律を成立させたのは、不人気の増税決定を民主党の陰に隠れて押し通そうとしたためだ。こちらも姑息な政党なのだ。

 自公両党が法案採決に際して野田氏と「近いうちに信を問う」合意を結んだのは、近いうちに総選挙をやれば、政権を取れると考えたからだ。すべてのものごとが、善と悪、正義と不正義などの尺度によって決められず、得か損、有利か不利かの尺度で決められている。このような政治の劣化が日本弱体化をもたらす元凶になっている。

不正と不法がまかり通る日本

 日本が本格的におかしくなり始めたのは2009年からだ。きっかけは、小沢一郎民主党に対して検察が不正な攻撃を仕掛けたことだ。民主党の大躍進は06年4月に小沢氏が代表に就任したところから始まっている。瀕死の民主党で火中の栗を拾い、民主党による政権奪取に手が届くところまでこの党を躍進させた。

 小沢氏が極度に警戒された理由は、小沢氏が日本の既得権益を破壊する可能性を秘めていたからだ。米官業政電の五者が日本の既得権益である。この五者による日本政治支配の構造を小沢氏が破壊してしまうかも知れない。この正しい分析を背景に、ウォルフレン教授のいう「人物破壊工作国会」が小沢氏に対して仕掛けられた。

 09年3月の大久保隆規氏逮捕、10年1月の石川知裕氏逮捕は、いずれも刑事事件として摘発するような代物でない事案を問題にしたものだ。そして、10年には検察が真っ赤な嘘の捜査報告書を捏造して小沢氏を刑事被告人に仕立て上げた。史上空前の国家犯罪だが、いまだに検察は犯人検挙に踏み切っていない。

 09年9月に発足した鳩山由紀夫政権を日本のメディアは総攻撃した。戦後67年もの間、日本領土は米軍に占領され続けている。日本を占領する外国軍を排除して初めて国家の独立が回復する。そのための貴重な第一歩を踏み出そうとした鳩山氏を日本のメディアは支援せずに攻撃し続けた。

 米国に「言うべきことは言う」ことを彼らは「日米同盟をだめにする」ことだと攻撃する。彼らが主張する「日米同盟の強化」とは、危険極まりない飛行物体の飛行訓練を住宅密集地上空で行いたいとの米軍の命令にひれ伏すことなのだ。これを「日米同盟を深化させる」適切な行動として絶賛し、必要のない米軍の国外退去を求めることを総攻撃するのが日本の腐り切った御用メディアである。……

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