中国を利する沖縄批判
日本で沖縄に対する排外主義が強くなっています。その代表的な例が、1月2日に放送された東京MXの「ニュース女子」という番組です。この番組では、沖縄県の米軍基地反対運動は「日当をもらっている」などとされ、さらには運動に中国が関与していることが示唆されていました。
しかし、このような誹謗中傷を行えば行うほど、沖縄はますます日本から離れていってしまいます。それにより最も得をするのは中国です。その意味で、沖縄批判こそ最も中国を利する行為だと言えます。
ここでは、弊誌2月号に掲載した、京都精華大学専任講師の白井聡氏のインタビューを紹介したいと思います。全文は弊誌2月号をご覧ください。
ニコルソン発言はある意味で理にかなっている
── 昨年12月13日に沖縄県にオスプレイが墜落しました。今回の事故についてどのように見ていますか。
白井 もともとオスプレイをめぐっては、事故の多い欠陥機だという見方もあれば、他の機体と比べてとりわけ危険なものではないという見方もありました。これは非常に技術的な問題であるため、私の知識ではどちらが正しいか断言はできません。
しかし、今回の事故の原因は、空中給油訓練中にオスプレイのプロペラが給油ホースに引っかかったことだとされています。これは素人目から見ても、ちょっとした操作ミスで事故が起こってしまうような杜撰な設計だという印象を受けます。実際に事故が起こってしまったことを考えれば、危険な機体であるという見方が正しかったということであり、人的犠牲が出なかったことは不幸中の幸いだったと言えます。
また、事故後に生じた一連の問題にも注目する必要があります。第一に、この事故をめぐるマスコミの報道です。在京メディアの多くは今回の事故について、オスプレイが「不時着」したと報じていました。しかし、あの事故を「不時着」と言うことはできません。実際、沖縄のメディアは「墜落」という表現を用いています。だいぶ以前から在京メディアと沖縄メディアの物の見方の違いが顕在化してきましたが、これは沖縄と日本の距離がますます離れつつあるということです。
次に、在沖米軍トップのニコルソン四軍調整官の発言です。ニコルソン氏は抗議に訪れた沖縄県の安慶田光男副知事に対して、「住宅や県民に被害を与えなかったことは感謝されるべきだ」と述べたと報道されています。明らかにアメリカ側が不始末を仕出かしているにもかかわらず、その被害が少なかったことを感謝しろなどと言われれば、誰もが怒りを覚えるはずです。
しかし、単に腹立たしいというだけでは素朴にすぎます。問題は、なぜ米軍人があのような態度をとるのかということです。
実は、日米安保体制やそれに伴う日米地位協定の本質に鑑みれば、あのニコルソン氏の極めて傲慢な態度は理にかなったものです。日米安保条約はアメリカに対して、日本全土を基地として使用できる権利を与えています。しかも、これは日本側が自ら進んで差し出し、アメリカ側が「日本がそこまで言うなら受け取りましょう」ということで権利を得た形になっています。このことは、例えば豊下楢彦さんの『安保条約の成立』などを読めばわかります。そのため、アメリカ側がニコルソン氏のような態度をとるのはある意味で当然のことなのです。
同じことがオスプレイの事故処理についても言えます。2004年に沖縄国際大学に米軍のヘリコプターが墜落した時と同じように、今回も事故処理は米軍が行っており、日本側は関与することができていません。しかし、これもアメリカが何か無法なことをやっているということではなく、日米地位協定に基づく当然の行動なのです。
それゆえ、批判すべきは、これほど屈辱的な状態をずっと放置してきた日本の権力のあり方そのものです。事実、このような不平等な地位協定をアメリカと結んでいるのは日本だけです。東京外国語大学教授の伊勢﨑賢二さんは、日米地位協定における日本の地位の低さは、アメリカがアフガニスタンと結んでいる地位協定におけるアフガニスタンの地位よりも低いと指摘しています。……
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