小池新党に期待できるか

熱狂に流されないために

 衆議院解散を受けて、小池百合子氏の動向に注目が集まっています。安倍政権には多くの問題があり、不支持率が高まっていることは間違いありません。しかし、小池氏や小池新党に期待できるかどうかはまた別の話です。国民は熱狂に流されず、一度立ち止まり、冷静に判断する必要があると思います。

 ここでは弊誌8月号に掲載した、作家で作詞家の適菜収氏と哲学者の山崎行太郎氏の対談を紹介したいと思います。全文は8月号をご覧ください。

小池百合子は権力にしか興味がない

山崎 今回の都議選では都民ファーストが圧勝し、自民党が大幅に議席を減らすことになりました。自民党は国政で議席を持ちすぎているから、都民ファーストが勝てばある程度バランスがとれるとは思っていたんですが、ちょっと勝ちすぎてしまいましたね。

適菜 自民党の暴走にストップがかかったこと自体はいいのですが、都民ファーストも安倍政権と同様、「ふわっとした空気」に乗っかった都市政党ですからね。危なさという意味では安倍政権と何も変わりません。

山崎 小池都知事は政局を見る目が鋭いと言われています。確かに彼女が都知事選に立候補したタイミングなどを見ると、そういう見方もできるかもしれない。しかし、一貫した政治思想のようなものを持っているかと言えば、とてもそのようには見えません。

適菜
 そうですね。小池は「政界渡り鳥」と呼ばれているように、細川護煕の日本新党から立候補し、その後は小沢一郎のところに行ったり、小泉純一郎のところに行ったり、時の権力に接近することでのし上がってきました。政策的な判断で動いているのではなく、世の中の空気や力関係を見ているだけです。権力にしか興味がないんです。

 しかも、小池のブレーンについているのはいかがわしい連中ばかり。そのうちの一人が、慶應義塾大学教授で経営コンサルタントの上山信一です。もともと上山は大阪維新の会のバックで動いていた人物です。大阪の市営地下鉄を民間会社に売り飛ばそうとしたり。

 それから、元青山学院大学教授の小島敏郎もブレーンの一人です。彼は小池が小泉政権で環境大臣だった時にもブレーンをしていました。小島は名古屋市長の河村たかしの高校の同級生で、1980年代に名古屋の「藤前干潟問題」にも関わっています。要するに、左派系の環境活動家なんですよ。市場移転問題を小池に吹き込んだのも小島のようです。

山崎 経営コンサルタントは、いかに顧客の要望に答えるかではなく、いかに顧客を騙すかということに長けた連中です。そんな人間をブレーンにするということは、商売人の発想で政治を行っているということですね。そういう都知事に期待してしまう東京都民というか、日本国民にも問題があります。

適菜 大衆とはそういうものですよ。大衆が政策に基づいて投票先を決めるわけがない。それは何千年も前からわかっていることです。だからこそ民意が暴走しないように、三権分立や二院制など、民意が直接反映されないような政治システムを作ってきたわけですよね。

 ところが、日本ではこの四半世紀にわたり、「民意に従え」だの「制度を変えろ」だのと大合唱を続け、政治をどんどん壊してしまいました。その結果、支持率が高く、多数派さえ維持していれば、議会のルールをすっ飛ばしても問題がないということになってしまった。国政で言えば、2年前の安保法制や、先日の共謀罪がそうですね。

 都政は国政とは仕組みが異なりますが、今回の都議選にも民主主義の弊害があらわれています。実際、都民ファーストの議員たちは、自民党や民進党から立候補しても絶対に当選できない出来損ないばかりだった。こうした連中が小池の名前を使って票を集めたわけです。

わかりやすい答えに飛びつく大衆

山崎 そういう意味では、我々はこれをきっかけに、「大衆とは何か」ということを考えないといけませんね。適菜さんは『安倍でもわかる保守思想入門』(KKベストセラーズ)で、ドイツの哲学者であるハンナ・アーレントを引用しながら大衆と全体主義の問題について議論していますよね。

 アーレントは、難しい問題が生じた時に、単純明快でわかりやすい答えを求めることが全体主義につながると言っています。安倍首相は「この道しかない」と言っていますが、わかりやすい答えを求めたがるところに大衆の特徴があると思います。

適菜 大衆は白と黒の二項対立でしか物事を考えられないんです。私が安倍を批判すると、「だったら蓮舫を支持するのか」と言ってきたり。なぜ安倍を批判することが蓮舫を支持することになるのか。二項対立でしか物事を見ていないから、そういう発想になるんですよ。