望月衣塑子 メディアは権力に屈するな

迷惑防止条例改正に反対する

 東京都の迷惑防止条例が改正されました。これにより国会前の抗議運動やメディアの取材などが規制の対象とされていく恐れがあります。警視庁はデモや取材は対象外としていますが、あらゆる法律や条例は運用次第でどうとでもなります。行政側の言い分をそのまま鵜呑みにすべきではありません。

 ここでは弊誌5月号に掲載した、東京新聞記者の望月衣塑子氏のインタビューを紹介します。全文は5月号をご覧ください。

迷惑防止条例が悪用される危険性はある

── 東京都の迷惑防止条例が改正され、国会前の抗議行動や、報道機関の張り込み取材なども規制の対象となる恐れがあると懸念されています。

望月 森友、加計、日報問題などをめぐって 国民の不満が高まる中で、政権が国会や官邸前での抗議行動の拡大に神経をとがらせているのは間違いないでしょう。いま、抗議行動が行われている国会周辺は過剰警備ですよ。国会議事堂前駅で地上へ出る出口の一部が鉄柵で封鎖されています。地上の歩道にも警察官がずらりと並んでいます。

 振り返ると、2014年8月に、自民党のプロジェクトチームが国会前などでの大音量の街宣やデモに対する規制を議論しようとしました。このとき、政調会長(当時)の高市早苗さんは、「仕事にならない状況がある。仕事ができる環境を確保しなければいけない」と述べていました。様々な理由をつけて、抗議行動を規制したいというのが政権の本音であり、迷惑防止条例が悪用される危険性はあると思います。

 実際、安倍政権下では、政府の方針に抵抗する人々が容赦なく弾圧されてきました。例えば、沖縄の米軍基地反対運動の指導者である山城博治さんは、2016年10月に高江のヘリパッド建設に反対する抗議行動中、有刺鉄線を切断したとして器物損壊容疑で逮捕され、5カ月間も勾留されました。森友学園前理事長の籠池泰典さんは、証拠隠滅、逃亡の恐れもない中で、未だに長期の勾留が続いています。

── メディアに対する圧力も強まっています。

望月 いま、「政治的公平性」などを求める放送法4条を撤廃する動きが出てきています。メディアに対する牽制ではないかと感じています。

 最近も、NHKの幹部がニュース番組の編集責任者に対し、「森友をトップニュースで伝えるな」「トップでも仕方がないが、放送尺は3分半以内」などと具体的な指示をしていたことが、共産党の山下芳生議員によって明らかにされました。官邸は、NHKに対して、国際放送で安倍さんの海外での演説をもっと流すように注文をつけているとも言われています。

 安倍政権は、特にテレビの影響力を警戒しています。総選挙を控えた2014年11月20日に自民党筆頭副幹事長(当時)の萩生田光一さんが、在京のテレビキー局の番記者らに文書を手渡し、投票日までの報道に「公平中立、公正な報道姿勢にご留意いただきたくお願い申し上げます」と釘を刺しました。

 2015年1月には、元経産官僚の古賀茂明さんが「報道ステーション」(テレビ朝日系)で、イスラム国に誘拐された日本人ジャーナリストの問題で、政府の対応のまずさを指摘し、「I am not ABE」のフリップを掲げたところ、菅官房長官の秘書官から同局の番組編集長に電話が入り、その後、「古賀は万死に値する」といった内容のショートメールが編集長に送られたと聞きました。古賀さんは同年3月いっぱいで番組を降板しました。その後も報道ステーションだけではなく、TBSの「NEWS23」の岸井成格さん、NHKの「クローズアップ現代」の国谷裕子さんなど、政権にしっかり意見を言っていた人たちが次々に降板していきました。……

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